ソフトウェアの特許性

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世界主要国・地域におけるソフトウェアの特許性


中国・ロシアをのぞきビジネス特許に コンピュータ プログラムと同一基準を適用する主用各国


ブラウン・ラドリック・フリード&ジェスマー法律事務所
ジョン・J・ペニーJr.
翻訳:飯山和俊(RYUKA国際特許事務所所属弁理士)


米国

ステート・ストリート・バンク事件(State Street Bank & Trust Co. v. Signature Financial Group Inc., 47 USPQ2d 1596 (Fed. Cir. 1998))以降、近年、米国におけるコンピュータプログラムの特許性に関する論点は明かになってきている。ステートストリートバンク事件において、連邦 巡回裁判所は、有用で、具体的かつ有形の結果を生むすべての請求項は特許されうると判決した。当事件において、特許は「ミューチュアル・ファンドの会計代 理人および管理人としての[特許権者の]ビジネス用に開発された投資構造を実行するデータ処理システム」に関するものであった。マサチューセッツ地裁は、 この特許は数学的アルゴリズムを請求し、特許されないビジネス方法のためのものであるので、法定の主題を請求しておらず、無効であると判決した。連邦巡回 裁判所は原判決を破棄し、「離散的なドルの値を表すデータを、機械により数学的な一連の計算を通じて最終的な株価へ変換することは、『有用で、具体的かつ 有形の結果』を生むので、数学的アルゴリズム、公式または計算式における実際上の利用性を構成する」と判決した。連邦巡回裁判所は、米国特許法101条の 適用範囲が広いことを強調すると共に、ビジネス方法の例外はもはや適用できないと判決した。連邦巡回裁判所は、チャクラパティ事件(Diamond v. Chakrabarty, 447 U.S. 303, 309 (1080))において法101条を「太陽のもとで人間によってなされたいかなるもの」についてまで広げた最高裁の判決も確認した。
ステート・ストリート・バンク事件における連邦巡回裁判所の判決は、アルゴリズムが特許されうるためには、それが「有用な」方法で適用されなければならな いと判決したアラパット事件(In re Alappat, 33 F.3d 1526, 31 USPQ2d 1545 (Fed. Cir. 1994) )およびアリズミア・リサーチ・テクノロジー事件(Arrythmia Research Technology Inc. v. Corazonix Corp., 958 F.2d 1053, 22 USPQ2d 1033 (Fed. Cir. 1992))の判決と共鳴するものであった。特にステート・ストリート・バンク事件において、連邦巡回裁判所は、データを最終的な株価へ変換することは、 「有用で、具体的かつ有形の結果」を生み、それゆえこの特許は法定の主題となることを判決した。
同様に、AT&T事件(AT & T Corp. v. Excel Communications Inc., 172 F.3d 1352, 50 USPQ2d 1447 (Fed. Cir. 1999), cert. denied, 120 S. Ct. 368 (1999), on remand 52 USPQ2d 1865 (D. Del. 1999))において、連邦巡回裁判所は、数学的アルゴリズムを有する長距離電話請求書作成方法が、数学上の原理の他の使用に先取りすることなく、有用で 具体的かつ有形の結果を生じるようにそのアルゴリズムを用いているので、この方法に係る請求項は特許されうる法定の主題であると判決した。
米国特許商標庁(USPTO)は、ステートストリート事件およびAT&T事件の巡回裁判所判決と整合するように審査基準を更新してしまった(審査基準 (MPEP)2106)。よって、米国特許商標庁は、それが「有用で、具体的かつ有形の結果」を生むのであれば、いかなる請求項に係る発明も特許されうる 法定の主題であると考えることになろう。審査基準2106に記載されているように、明細書には、請求項に係る発明について実際上の利用性について何らかの 表示が含まれなければならない。
したがって、米国においては、「有用で、具体的かつ有形の結果」を生むコンピュータソフトウェアに係るいかなる請求項も特許されうる主題を構成する。その コンピュータソフトウェアがビジネス方法に関連するという事実とは関係がない。特許性のためのテストは同一である。これは、コンピュータ関連発明がすべて 特許されうることを意味するものではない。単なる自然現象、抽象的アイディア、自然法則にすぎないコンピュータ関連発明は、特許されない。例えば、音楽、 文学作品、およびコンピュータ読み取り可能な媒体に記録されたデータは、法定の主題ではない。また、単に数字や抽象的アイディアを演算する、数学的問題を 解く、または自然法則を表示するにすぎないコンピュータプログラムも特許されない。


日本

日本国特許庁は、2000年12月28日に、コンピュータソフトウェア関連発明についての審査基準の改訂版を発行した。この改訂により、ソフトウェアのプ ログラムを請求項の対象とすることができるようになった。この改訂審査基準におけるプログラムの請求項に関しては、2001年1月10日以降の出願に適用 される。改定審査基準のもとでも、法上の発明は「自然法則を利用した技術的思想の創作」であると定義される。改訂審査基準において、ソフトウェア関連発明 が自然法則を利用した技術的思想の創作を構成するか否かの基本的なテストは、以下の通りである。そのソフトウェアによる情報処理が、ハードウェア資源を用 いて具体的に実現されている場合、そのソフトウェアは、「自然法則を利用した技術的思想の創作」であるとされる。「ハードウェア資源を用いて具体的に実現 されている」 とは、ソフトウェアとハードウェアが協働して、有用な目的を実現するために情報の演算または加工を実行することをいう。さらに、「自然法則を利用した技術 的思想の創作」とされるためには、請求項に係る発明が、一定の目的を達成するのに十分に具体的でなければならない。言いかえると、コンピュータソフトウェ ア関連発明は、一定の実際上の目的を達成するための具体的な手段を備えなければならない(平成9年(行ケ)第206号(東京高判平成11年5月26日判決 言渡))。ソフトウェアについてのこの基準は、有用で、具体的かつ有形の結果を要件とする米国の基準に類似していると考えられる。
例示により、これらの規定の適用が明確にされている。ある例において、受信手段がネットワークにより配信される記事を受け取り、ユーザが記事中に特定の言 葉が存在するかどうかを判断して、特定の言葉が存在する記事を保存手段に保存する記事保存方法は、法定の主題でないとされる。判断のステップが、ソフト ウェアとハードウェアの協働による具体的手段ではなく、人間の精神活動によるものだからである。一方、選択手段が、受信手段により受信された記事中に特定 の言葉が存在するかどうかを判断して、特定の言葉が存在する記事を保存手段に保存する記事保存方法は、法定の主題であるとされる。判断のステップが、ソフ トウェアとハードウェアの協働による具体的手段により実現されるからである。
上記の要件を有するソフトウェアと協働する情報処理装置、およびそのソフトウェアが記録されるコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、特許されうる。さら に、機器等(例えば、炊飯器、洗濯機、自動車エンジンなど)を制御するコンピュータソフトウェアも、特許されうる主題を構成する。さらには、対象の物理的 性質または技術的性質(例えば、自動車エンジンの燃料空気混合比、加熱室の温度など)に基づく情報処理を行うコンピュータソフトウェアも、特許されうる。 法定の主題に該当しない例は、自然法則自体、情報の単なる提示、人間の精神活動、数学上の公式などである。
改訂審査基準においても、ビジネスの方法自体は法上の発明を構成しないことが明記されている。しかし、ビジネスの方法がコンピュータやシステム上で実行さ れる場合、請求項に係る発明はビジネス用コンピュータソフトウェアやシステムの観点から特許されうる。すなわち、ビジネスの方法を含むソフトウェアまたは システムの請求項は、請求されたシステムまたはソフトウェアが上記の要件を満足していれば、法定の主題である。一例として、種々の条件に基づいて日用品の 売れ行きを予測するソフトウェアは、結果を得るためにそのソフトウェアと相互作用するハードウェアに請求項が言及していれば、特許されうる。

欧州

欧州特許条約(EPC)52(1)条に規定されるように、欧州特許は、産業上の利用可能性があり、新規であり、かつ進歩性を有するいかなる発明に対しても 与えられる。発明が、あらゆる種類の産業において生産または使用することができる場合に、その発明は産業上の利用可能性があるとされ、ここで産業とは技術 的性質についての物理的作用を含むものであると定義される。さらに、特許されうるためには、発明が技術分野と関連し(規則27(1))、技術的課題を取り 扱い(規則27(1)(c))、かつ請求項において定義された技術手特徴を有しなければらない(規則29(1))という限度において、一種の技術的性質で なければなならい。これらの規則は、発明が何らかの技術的進歩や有用な効果を奏することを要求していない。しかしながら、有用な効果は、進歩性の有無を判 断する際に非常に有効である。
欧州特許条約52(2)条に、特許されない主題が列挙されている。このリストに含まれるのは、ビジネスをするための方法、数学的方法およびコンピュータプ ログラムである。しかし、コンピュータプログラムおよびビジネスをするための方法それ自体は特許性を否定されているにもかかわらず、コンピュータプログラ ムおよびビジネス方法に係る請求項は、それらが一種の技術的性質であれば、特許されることもある。すなわち、コンピュータプログラムは、それが技術分野と 関連し、技術的課題を取り扱い、かつ請求項において定義された技術手特徴を有していれば、特許されうる(規則27(1), 27(1)(c), 29(1))。
欧州特許庁審判部の審決T208/84において、コンピュータ関連発明の特許性を取り扱う原則を示した。本件において、ある数学的方法に発明が存在すると しても、その方法を用いる技術的処理に係る請求項は、その数学的方法それ自体に対して保護を求めているのではないと決定された。したがって、あるプログラ ムの制御によって実行される技術的処理に係る請求項は、コンピュータプログラムそれ自体とは異なり特許されうる。
欧州特許庁審判部の最近の審決(T1173/97)において、審判部は、対象のプログラムがクレームにおいて十分に定義されかつ限定されていれば、コン ピュータプログラムを特許しなければならないと決定した。したがって、コンピュータプログラムに係る発明は、それが技術的効果をもたらすものであれば特許 される主題を構成する。同様に、コンピュータ上で実行されるビジネス方法も、それが技術的効果をもたらすものであれば特許されることがある。
上述の規定の適用は、欧州特許庁審判部のいくつかの審決例によってさらに明らかにされる。審決(T6/83 (OJ 1990, 5))において審判部は、あるデータシステムの中で異なるプロセッサに保持されるプログラムとデータとの間の内部通信における連携および制御に係る発明 が、本質的に技術的な問題を解決するものであるとみなされると認定した。したがって、この発明は、法52(1)条が意味するところにより特許されうると決 定された。審決(T 158/88, (OJ 1991, 566))において審判部は、特定の表示形状で文字等を表示する方法は、データ処理システムおよびその視的ディスプレイ部を動作させる技術的方法を記載し たものではなくて、むしろプログラムについてのアイディアを記載したものであると決定した。審判部は、コンピュータプログラムは、その請求項が単にデータ を変更するにすぎず単なるデータ処理以上の効果を奏さないのであれば、技術的作用の一部をなさないと理由付けた。審判部は、請求項に係る方法により処理さ れるデータが動作のパラメータや装置を表現するものもなく、装置の動作する過程で物理的もしくは技術的効果を有するものでもなく、かつ請求項に係る方法に よって技術的課題が解決されない場合には、この請求項に係る発明は技術的手段の使用を構成せず、52(1)条、52(2)(c)条および52(3)条に基 づき特許される発明ではないと判決した。他に、審決(T 26/86 (OJ 1988, 19))において、あらかじめ組み込まれたルーチンにより動作するデータ処理部を有するX線装置が特許されうるかどうかが判断された。審判部は、X線管に 過度の負荷をかけることなく最適な照射を作るためにX線管を制御するので、このルーチンは技術的効果を奏すると認定した。
欧州におけるコンピュータプログラムの特許性に関する基準は産業上の利用性において技術的効果を奏するソフトウェアを要件とし、これは、有用で、具体的か つ実際上の結果を要件とする米国の基準と同様にみえる。欧州の基準では有用な効果を要求していないが、技術的効果の要件は、米国における有用性の要件と同 様であると考えられる。すなわち、技術的効果を奏する発明は、おそらく有用であろう。

韓国

韓国特許法2条において、発明は自然法則を利用した技術的思想の創作であって高度なものであると定義されている。技術的思想とは、一般に、特定の目的を達 成するための具体的手段であると定義される。さらに、29条1項に規定されるように、法上の発明は産業上の利用性を有しなければならない。したがって、韓 国特許法のもとで法上の発明となるためには、コンピュータプログラムに係る請求項は、産業において実際に利用できる特定の目的を実現するものでなければな らない。これらの要件は、欧州における産業上利用性の要件および米国における有用性の要件と実質的に類似していると考えられる。
韓国におけるコンピュータ関連発明の審査基準は、ソフトウェアに係る発明を請求するいくつかの方法、すなわち、方法の請求項、物の請求項および記録媒体に 係る請求項について規定している。方法の請求項は、次のいずれかであれば法定の主題である。(1)現実上の利用性が明細書に記載されるか若しくは当業者に 知られているコンピュータであって、請求項がコンピュータ外部の物理的な変化をもたらす手順や工程に言及しているもの、または(2)請求項に係る方法が、 請求項の文言において現実上の利用性に限定されているものである。方法がコンピュータ内部の処理に限られる場合には、現実上の利用性が請求項の中で言及さ れていなければならない。
審査基準は、方法が法定主題となるような物理的変化について、いくつかのタイプを記載している。第1のタイプは、コンピュータにより実行される手順から独 立しかつその後にこのコンピュータ外で実行される物理的作用を含み、ここで、物理的作用は、実体上の物理的対象物の操作を含むとともにこの対象物が物理的 に異なる属性または構造を有する結果をもたらすものである。法上の物理的作用の一例として、審査基準は金型の中でゴムを硬化する方法を列挙しており、ここ でコンピュータはゴムを硬化する時間を決定するために用いられ、物理的作用は時間が満了した時点で金型を開くことである。この方法は、米国の有名な最高裁 事件(Diamond v. Diehr (450 U.S. 175 (1981))における方法と実質的に同様である。
ある方法を法定の主題にする物理的変化の他のタイプは、物理的対象物を表現する無形の信号について物理的変化を生じさせる処理である。審査基準は、例とし て弾性波探査を管理するためにコンピュータを用いる処理を列挙しており、ここでは、反射された弾性のエネルギー波が地下形状に関する情報をもたらす電気的 信号に変換される。
請求項の文言により現実上の利用性に限定されるコンピュータ処理に関して、審査基準は、現実上の利用性を実現するためにコンピュータが何をするのかが重要 な考慮事項であると教示している。審査基準は、純粋に数学的なアルゴリズムを実行する抽象的なアイディアが何らかの有用性を持つという事実にもかかわら ず、それがアイディア若しくは数学的アルゴリズムの現実上の利用性に限定されない限り、法定の主題ではないと規定している。例えば、雑音を描写する数学的 アルゴリズムを単に実行するような、請求項に係るコンピュータプログラムは法定の主題ではない。しかし、そのアルゴリズムに適用される雑音を濾過するよう な、請求項に係るコンピュータプログラムは、法定の主題である。
コンピュータ関連発明についての物の請求項は、それが、ハードウェアの形でまたはハードウェアとソフトウェアの組み合わせの形で、機械または生産物の物理 的構成を特定することにより有用な機械または生産物を定義すれば、法定の主題である。審査基準は、2つのタイプの請求項を記載している。(1)内在する処 理を実行するためのあらゆる機械を包含する請求項、および(2)特定の機械または生産物を定義する請求項である。第1のタイプに対して、審査官はこの請求 項が法定の主題であるかどうかを決定するために、内在する処理を審査しなければならない。第2のタイプに対しては、関連する技術において現実上の利用性を 有すれば、この請求項は法定の主題である。
法定の主題でない例として、審査基準は列挙しているものは次の通りである。(1)単なるコンピュータリスト、(2)コンピュータ読み取り可能な媒体に記録 されていないデータ構造、(3)単なる情報の提示(例えば、音楽、文学、データ、事実等)、および(4)単に数学的処理、自然法則、抽象的アディアのみか らなり何ら現実上の利用性が請求されていない請求項である。
韓国特許法において、eコマース関連発明は特許されうる。eコマース発明に対する特許性の基準は、コンピュータプログラムに対する特許性の基準と同一であ る。すなわち、請求されたビジネス方法は自然法則を利用した技術的思想でなければならず、かつ産業において実際上利用できるものである(2条、29条 (1)項)。コンピュータ上で実行される手順を含まず、かつ純粋なビジネス方法(例えば、ピラミッド型販売形態)または抽象的なアイディアに言及する請求 項は、法定の主題でない。コンピュータ上で実行される手順を含む請求項は、それが産業上利用性を有する特定の手段に係るものであれば、法定の主題である。 産業上利用性を有する特定の手段に係る請求項であるかどうかを決定するために、上述の、コンピュータ関連発明の審査基準が適用される。

オーストラリア

一般的に、ソフトウェアは、人工的に創作された最終結果を実現する形態や方法を含みかつ経済的利用性を有すれば、法定の主題である。さらにソフトウェア発 明は、産業上利用できなければならない。単に数学的課題を解決するにすぎないソフトウェア(例えば、数学的アルゴリズム)は、法定の主題でない。これらの 要件は、欧州における産業上利用性の要件および米国における有用性の要件と実質的に類似していると考えられる。
コンピュータプログラムの特許性について先例を示した最近の事件は、CCOM事件である(CCOM v. Jiejiong, 28 IPR 481, (1994) AIPC 91-079)。この事件において、連邦裁判所は、ナショナル・リサーチ・ディベロップメント社事件(Federal Court, citing National Research Development Corporation v. Commissioner of Patents, (1959) 102 CLR 252, (1961) RPC 134)およびIBM事件(International Business Machines Corporation v. Commissioner, 22 IPR 417, 1A IPR 63)引用し、以下の通り述べた:
「方法は、・・・特許性の枠内に入るために、その方法が美的技術から区別される有用な技術に属するという意味で、何らかの物質的な効果を提供するものでな ければならない・・・-それは経済活動の領域である。」

この法の適用を用いて、CCOM事件は、コンピュータソフトウェア関連発明が特許されうるかどうかを決定するテストを定式化し、それは「経済活動の分野の 有用性において、人工的に創作された状態としての最終結果を実現する形態や方法」があるかどうかのテストである。
CCOM事件において言及されたこのような「形態または方法」と考えられるであろうものは、次の通りである。(1)特許されうるコンピュータソフトウェア についてのソースコード、(2)特許されうるコンピュータソフトウェアについての実行コード、および(3)経済活動の分野における利用性を有する結果を実 現するためにプログラムされた場合のコンピュータである。特許されうるソフトウェアとなるであろう例は、次の通りである。(1)硫化ゴムの製造方法のよう に、産業上の工程の制御装置に含まれるようなソフトウェア、および(2)データの流れを制御したり、コンピュータの処理を早めることを可能にするソフト ウェアのように、コンピュータの処理に係るソフトウェアである。
一般的に、単にビジネスの仕組みそれ自体にすぎないものは、特許されない。これらは、「人工的に創作された状況」を生じない数学的アルゴリズムと類似す る。 しかし、電子商取引やビジネス方法に関連する発明は、経済上の利用性について人工的に創作された状態としての最終結果や、その最終結果を得る方法が存在す れば、特許されうる。技術的解決策や技術的効果を生ずるビジネス方法は、一般的に「人工的に創作された状態」の範疇に入る。特許されうる電子商取引発明の 例は、電子取引を可能にする方法、インターネットサイトにおける相互作用を電子的に創作または監視、または消費者と需要社との間の電子的な連結を創作する する方法などを含む。
ウェルカム・リアルタイムSA事件(Welcome Real-Time SA v. Catuity Inc., (2001) FCA 445)において、裁判所は、ビジネス方法特許も、他のタイプの処理および方法と同じように扱わなければならないと判決した。ウェルカム・リアルタイム SA事件において、特許は、トレーダーのロイヤリティと結合したスマートカードの処理方法に関するものであった。裁判所は、この特許はビジネスを行うため の方法ではないと判決した。むしろこれは、「ビジネスにおける、スマートカードやPOS端末のような構成を含む方法および装置」であるとした。

カナダ

カナダ特許法2条には、発明は「新規かつ有用なあらゆる技術、方法、機械、生産物若しくは組成物、またはあらゆる技術(art)、方法、機械、生産物若し くは組成物の新規かつ有用なあらゆる改良」と定義されている。技術(art)は、一定の結果を実現する様式、形態、方法を意味する。技術(art)は、物 質的対象物の性質または状態に何らかの変化を与えなければならない。特許されうるためには、発明が産業、貿易または商業上の現実上の利用性を有しなければ ならず、かつ単なる科学的原理、数学式、抽象的定理以上のものでなければならない。
コンピュータプログラムを組み込んだ新規かつ有用な処理、およびプログラムされたコンピュータを組み込んだ装置を組み込んだ新規かつ有用な処理は、コン ピュータ関連部分が伝統的に特許されうるとされる領域に含まれる他の現実上のシステムと一体となっていれば、特許されうる。カナダにおいて特許されうるソ フトウェア関連発明の一例は、ホッケー用スティックの縁を一定の軌跡に沿った曲線で切るための刃を制御するためのコンピュータプログラムである。この例に おいて、コンピュータ関連部分は、伝統的に特許されうる現実上のシステムであるところのカッターと一体となっている。この規定の適用は、米国の基準よりも より厳しく、そして米国のダイヤモンド事件で示された基準により沿ったものであると考えられる。

ロシア

ロシアにおいて、コンピュータプログラムは現在、特許されない。しかし、コンピュータプログラムは著作権法によって保護される。

中国

中国では、コンピュータプログラム自体は、特許されない。しかし、技術的手段を通じて技術的課題を解決し、それにより技術的効果を実現するようなコン ピュータプログラム関連発明は、特許されうる。 コンピュータソフトウェアにのみ関連する発明、およびコンピュータ読み取り可能な媒体に記録されたコンピュータソフトウェアに関連する発明は、特許されな い。この基準は、実質的に欧州の基準と同様であると考えられる。
特許されうるコンピュータソフトウェア関連発明の例は、次の通りである。(1)工業的手順を制御するためのコンピュータソフトウェアに関連する発明、 (2)コンピュータの内部処理を向上させるコンピュータプログラム、(3)測定処理を制御するためのコンピュータプログラム、および(4)コンピュータ上 の一定の技術的課題を解決するためのデータ処理に関するコンピュータプログラムである。
現在、ビジネス方法は中国で特許されない。これにもかかわらず、数多くのビジネス方法関連特許出願が、現在、中国特許庁に係属中である。

まとめ


対象国 コンピュータプログラムにつ いての基準 ビジネス方法についての基準
米国 請求項に係る発明は、「有用 で、具体的かつ有形の結果」を生じることが必要 コンピュータプログラムにつ いての基準と同一
日本国 ソフトウェアは、有用な目的 を実現するためにハードウェアと協働することが必要 コンピュータプログラムにつ いての基準と同一
欧州 ソフトウェアは、産業上の利 用可能性を有し、かつ技術的効果を奏することが必要 コンピュータプログラムにつ いての基準と同一
韓国 ソフトウェアは、産業におい て現実上の利用可能性のある特定の目的を実現することが必要 コンピュータプログラムにつ いての基準と同一
オーストラリア ソフトウェアは、人工的に創 作された最終結果を実現するための形態または方法であって、経済上の有用性が必要 コンピュータプログラムにつ いての基準と同一
カナダ 請求項にかかる発明が産業、 貿易または商業上の現実的な利用を有し、かつ単なる科学的原理、数学式、抽象的定理以上であることが必要 コンピュータプログラムにつ いての基準と同一
中国 請求項に係る発明が、技術的 手段を通じて技術的課題を解決し、それにより技術的効果を実現するような発明であることが必要 特許されない
ロシア 特許されない(著作権でのみ 保護) 特許されない

(著者からのお知らせ:本稿の執筆にあたっては日本法の記述に関しては飯山和俊氏、韓国法の記述に関してはユン・ジン・ジャン氏のご協力をいただき ました。両氏に心より感謝申し上げます。)


1)新規で有用ないかなる方法、機械、生産物若しくは組成物、またはそれらの新規で有用ないかなる改良を発明または発見した者はだれでも、この法律の条件 および要件にしたがって、それらについての特許を取得することができる。


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