74億損害賠償請求判決について(アルゼvsサミー)

日本特許情報


 リストへ戻る

74億損害賠償請求判決について(アルゼvsサミー)

【事件の概要】 H14.3.19 東京地裁 平成11(ワ)23945
原     告 : アルゼ株式会社
被     告 : サミー株式会社
被告補助参加人 : 日本電動式遊戯機特許株式会社
上記事件において裁判所は、サミーの侵害を認定し、サミーに対して74億の損害賠償を命じました。今回の判決では、102条1項における「実施の能力」 「単位数量当たりの利益の額」「販売することができない事情」についての考え方を明示した点がポイントだと考えます。


【今回の判決から】
[高い損害賠償額を得るために]
近年、損害賠償の認定額が高額になっています。このことは知的財産権の保護を強化していることの現れと考えます。ただ、今回の認定額が特に高額だったの は、パチスロ業界特有の利益率の高さも影響していると考えます。

損害賠償額を大きく認定してもらうためには、特許発明の対象製品の単価をあげて、利益額を大きくすることが必要です。例えば、製品の一部分のみを特許権と して権利を取っている場合は、その部分の単価を元に損害賠償額が算定されますが、製品全体をクレームしていれば、1つの製品の単価を元に損害賠償額を算定 されます。

そのためには、できるだけ単価の高い製品形態をクレームすることが必要と考えます。
また、アルゼ判決では、商品のコストを狭く限定することにより利益を大きく計算し賠償金額を高めています。賠償金額はおそらく被告が得ていた利益より大き いでしょう。一種の懲罰的損害賠償額といえ、「侵害のし得」という状態に対する改革といえるのではないでしょうか。これは、新規技術の創作を促進して産業 を強化するという社会の要請に沿うものであり、特許権の財産価値は益々高まっていくと考えられます。
 

スロットマシンの出願件数 [早期出願の重要性]
価値の大きい発明は、出願件数がまだ伸びていない技術分野で作られます。このような発明は、現実の製品から離れているので、提案書を待つ従来の活動からは なかなか生まれません。しかし適切なナレッジマネジメントを行うことにより、組織的・継続的に創出することができます。

新たな製品のコンセプトを特許化を通じて創出することにより、新たな商品やサービスのビジョンが作られ、新規事業のオプションが広がります。
【当事者の対応】
サミーは今回の判決を不服として、東京高裁に控訴しております。そのため、上記判決はまだ確定しておりません。また、サミーは無効審判請求を既に行ってい たところ、地裁判決後に特許庁から独自に無効理由を発見したとして「無効理由通知書」が当事者に送られているとのことです。

特許庁が独自に無効理由を発見したことから、現在の特許権は無効になる確率は高いと思われます。また、アルゼ側の無効理由に対する訂正の内容によっては、 特許権は存続しても、サミー側の行為はもはや権利侵害とならない可能性もあり、東京地裁の判決が覆ることもあり得ます。


【損害賠償額の認定について】 (下線部は判決を引用しています)
特許法102条1項は、権利者は「侵害の行為がなければ販売することができた物」の「単位数量当たりの利益」に「侵害の行為を組成した物を譲渡した数量」 を乗じた額を権利者の「実施の能力」に応じた範囲内で損害額とできる旨規定しています。

判決の中で「実施の能力」については《侵害品の販売時に厳密に対応する 時期における具体的な製造能力,販売能力をいうものと解することはできず,特許権者において,金融機関等から融資を受けて設備投資を行うなどして,当該特 許権の存続期間内に一定量の製品の製造,販売を行う潜在的能力を備えている場合には,原則として,「実施の能力」を有するものと解するのが相当である。》としています。このことから侵害時の工場の生産能力や販売網の規模は重要ではなく、その当時に潜在的能力があるか否かが重要になってくるということです。

「単位数量当たりの利益の額」は、《追加的製造販売により得られたであろう売上額から追加的に製造販売するために要したであろう追加的費用(費用の増加分)を控除した額を,追加的製造販売数量で除した単位数量当たりの額と解すべき》としています。このことから開発費や設備費などすでに費やしている経費は追加的に製造する場合に必要な費用とは言えず、通常は控除の対象とはならないといえます。
「販売することができない事情」は、《侵害者の営業努力や市場に侵害品以外の代替品や競合品が存在したことなどをもって、「販売することができないとする事情」に該当するとは解することができない》としています。従来は侵害者の営業努力や代替品の存在を「事情」として損害額から控除するとした考えが多かったのですが、この判決では従来の考え方を否定しています。

 リストへ戻る

 PageTop