訴訟による収益が事業利益を上回る!

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訴訟による収益が事業利益を上回る!


近年、特許権侵害事件の損害賠償額が高騰しています。記憶に新しいところでは、アルゼ対サミー、アルゼ対ネットの特許侵害事件(パチスロ判決)があります。この事件では、合計84億円の損害賠償額となりました。*1
これは、今まで最高額であった約30億円(H2ブロッカー事件)の記録を、一気に2倍以上に塗り替えました。

パチスロ判決では、限界利益説に基づき損害賠償額を算定しています。限界利益とは、最も大きな(限界の)利益であり、一般的に販売額から製造原価などの製 品を追加的に製造する場合に必要となる費用(変動費用)のみを控除して算出されます。今回の判決では、原告の単位あたり利益を算出するのに、原告商品販売 価格から製造原価、広告宣伝費、販売費、ローヤリティを引いています。研究開発費は追加的に支払いが必要となる費用、すなわち変動費用とは考えられません ので、限界利益算出において控除の対象とはなりません。

次に、損害賠償金額を特許権者側から考えます。損害賠償金は原告(特許権者)の純粋な収入となりますから、損害賠償金を侵害品の販売額(侵害品の数×原告 の製品販売金額)で割ると損害賠償による利益の利益率を算出することができます。*2
限界利益説により算出された損害賠償金額の利益率は非常に高く、今回のパチスロ判決では約51.6%となります。*3
他に限界利益説に基づいて損害賠償額を算出したと考えられる代表的な判例にタコグラフチャート用紙事件(平成11年(ワ)23013)があります。この判 決では約3億6742万円の損害賠償額が認定されており、利益率は、約77.4%と非常に高額になります。*4
また、重量物吊り上げフック事件(平成12(ワ)8456)での損害賠償額は約1億4850万円であり、利益率は、約48.7%となります。*5
これらの利益率は、現実の事業による収益よりも高くなっています。
現在、日本では国を挙げ、知的財産の保護強化に乗り出しています。上記のような損害賠償額の高騰もその1つの表れだと考えます。損害賠償額=特許の価値ではありませんが、特許の価値を測る一つの目安にはなります。
これからは、特許出願の量だけではなく、本当に価値ある特許を戦略的に出願し、権利取得をしていく必要があると考えます。価値ある特許とは、コンセプトから生まれた特許だと考えております。
コンセプト特許を生み出すために、ブレーンストーミングを行うことにより暗黙知を引き出し、未来の事業と発明を創出する活動が大切になるでしょう。

 

*1   東京高裁に控訴中です。
*2   正確には損害賠償金額から裁判費用を差し引くべきであるが、ここでは省略した。
*3   損害賠償金額74億1668万円を、侵害品の数量(43,000台)に原告の平均販売価格(334,267円)を乗じたもので割ることにより算出
*4   損害賠償額3億6742万円を〔侵害品の数量(136万837㎡)×1㎡当たりの販売額(348.96円)〕で割ることにより算出
*5   損害賠償額1億4850万円を〔①侵害品の数量(17,864)×原告販売額(12,600円)+②侵害品の数量(5,124)×原告販売額(16,000円)〕で割ることにより算出

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