明細書等の補正の新・審査基準

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明細書等の補正の新・審査基準


龍華明裕/明石英也


1.新・審査基準の概要

従前は補正をすることができる範囲が「出願当初の明細書等に明示的に記載した事項」、及び「出願当初の明細書等の記載から直接的かつ一義的に導き出せる事項」に制限されていました。
この制限を弾力化すべく審査基準が改訂されました。新たな審査基準は、出願日が1994年1月1日以降で、2003年10月22日以降に審査される出願に適用されます。

(1) 補正可能な範囲が、「出願当初の明細書、特許請求の範囲、又は図面に明示的に記載した事項」、及び「出願当初の明細書、特許請求の範囲、又は図面に記載した事項から自明な事項」に改訂されています。

(2) 「出願当初の明細書等の記載から自明な事項」とは、出願当初の明細書等に記載がなくても、当業者が出願時の技術常識に照らして、その意味であることが明らかであって、その事項がそこに記載されているのと同然であると理解する事項をいいます。また、当業者が出願当初の明細書等の複数の記載*1から自明であると理解する事項を含みます。

(3) 出願当初の明細書等に記載された実施形態のみならず、発明が解決しようとする課題等の記載内容を総合的に考察して補正の適否を判断します。これに伴い、上位概念化、下位概念化等を伴う補正が一部可能となっています。


2.審査基準の改訂内容

2.1 特許請求の範囲の補正

(1)上位概念化により出願当初の明細書等に記載した事項を追加する補正、及び、下位概念化により出願当初の明細書等に記載した事項以外のものとなる補正は、従来通り許されません。
(例)× ①新規事項の判断に関する事例6 (添付資料[2])
× ②新規事項の判断に関する事例9 (添付資料[2])
× ③新規事項の判断に関する事例10(添付資料[2]) 

(2)請求項の発明特定事項の一部を削除して上位概念化する補正において、削除する事項が本来的に技術上の意義を有さず、当該補正により新たな技術上の意義が追加されないことが明らかな場合(削除する事項が、任意の付加的事項であることが明細書等の記載から自明である場合も同様)は、新規事項追加とならないので許されます。
(例)○ ①新規事項の判断に関する事例1 (添付資料[2]) 

(3)出願当初の明細書等に記載した事項の範囲内であれば、図面に基づき特許請求の範囲を補正することができます。
(例)○ ①新規事項の判断に関する事例39(添付資料[2]) 
○ ②新規事項の判断に関する事例40(添付資料[2]) 

2.2 発明の詳細な説明の補正

(1)発明の効果の追加
一般に、発明の効果を追加する補正は新規事項追加となります。ただし、出願当初の明細書等に発明の構造や作用・機能等が明示的に記載されており、この記載から当該効果が自明である場合は追加することができます。
(例)○ ①新規事項の判断に関する事例21(添付資料[2]) 判断基準の変更

(2)その他
先行技術文献の内容を特許請求の範囲や実施形態に追加する補正、発明の具体例を追加する補正、及び、出願当初の明細書等に記載した事項と無関係の事項や矛盾する事項を追加する補正は、従来通り許されません。

2.3 図面の補正

図面も、出願当初の明細書等に記載した事項の範囲内であれば補正をすることができます。しかし補正後の図面は、一般に出願当初の明細書等に記載した事項を超える場合が多いので、図面の補正は慎重に行う必要があります。
(例)○ ①新規事項の判断に関する事例44(添付資料[2]) 判断基準の変更
× ②新規事項の判断に関する事例46(添付資料[2]) 判断基準の変更


3.今後の対応

補正の制限が緩和されましたが、改訂後においても依然として米国と比較し厳しい補正制限が課されていますので、出願時においては従来通り明細書等の記載を十分に検討して下さい。

拒絶理由通知等に対する補正時においては、必要に応じて、出願当初の明細書等から自明な事項の範囲内で補正を行うことができます。ただし、新規事項追加は特許無効の理由となりますので、出願当初の明細書等に明示的に記載した事項の範囲を超える補正は最小限に抑えるべきです。また、このような補正を行う場合には、補正により追加した事項が出願当初の明細書等から自明な事項であることを、意見書により十分に説明する必要があります。

【参考資料】
[1] 特許庁:「明細書、特許請求の範囲、又は図面の補正(新規事項)」の改訂審査基準
[2] 特許庁:「明細書、特許請求の範囲、又は図面の補正(新規事項)」に関する事例集
[3] 特許庁:「明細書、特許請求の範囲、又は図面の補正(新規事項)」関連箇所の改訂について
*1 発明が解決しようとする課題の記載と発明の具体例の記載、明細書の記載と図面の記載、等


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