ビジネスメソッドパテントの特許性

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ビジネスメソッドパテントの特許性


2001年2月1日
RYUKA国際特許事務所

特許戦略としては、
(A)特許を取得し、活用していく
(B)他人の特許から自分を守る
ということが必要になります。
(A)特許を取得する場合
ビジネス方法を特許として保護していくには、特許庁に特許として申請する内容(具体的には請求項の記載)が、
1.特許の適格性
2.新規性
3.進歩性
を有することが必要です。以下、各項目について説明していきます。

1.特許の適格性を有すること
一般に「ビジネスモデル特許」と呼ばれている特許は、必ずしもビジネス方法そのものが特許として保護されているわけではありません。ビジネス方法の本質は 「人為的な取り決め」である場合が殆どです。この「人為的な取り決め」そのものは、2001年2月現在では特許の適格性を持たないと扱われています。
では、どのようにしたらビジネス方法を特許として保護することができるのでしょうか?それは、「ビジネス方法を実現するために必要であるシステム(コン ピュータ等)、あるいはビジネス方法をサポートするシステム或いはプログラム」を特許として申請すればいいのです。これにより、ビジネス方法を間接的に特 許として保護することが可能になります。

2.新規性を有すること
「新規性」とは、簡単に言いますと「今まで世の中に知られていなかったこと」です。ここで、秘密保守義務のある人は例外として扱われます。
1.で説明したように、ビジネス方法は「システム或いはプログラム」として保護されていくことになります。ここで、今まで世の中に知られていた物に、申請 しようとしたシステム或いはプログラムと「データの内容のみ」が異なったシステム或いはプログラムがあった場合、新規性を否定される可能性が非常に高くな りますのでご留意下さい。

3.進歩性を有すること
「進歩性」とは、その道の通常の専門家が容易に考え出すことができない程度のことをいいます。これは、特許法が技術の飛躍的進歩を促すことを目的の一つに していることに由来します。これを「ビジネス方法を実現するために必要であるシステム(コンピュータ等)、あるいはビジネス方法をサポートするシステム或 いはプログラム」に当てはめた場合、
「そのビジネス分野に関する常識と、コンピュータ分野の技術常識の双方を有している者が、容易に考えつかないこと」
が必要とされます。一件ハードルが高いように見えますが、裏返してみると、
「そのビジネス分野の常識からは容易に考えつかない」
場合には、従来のシステムか技術から容易に実現できた場合でも特許として認められる可能性があるということです。
進歩性の判断は非常に難しいのですが、参考までに、判断基準の例を挙げていきます。


 

  所定の目的を達成するためにある分野に利用されている方法、手段等を組み合わせたり特定の分野に適用することは進歩性はない
  人間が行っている業務をシステム化し、コンピュータにより実現することは進歩性はない


 

4.その他
特許を受けるための要件について説明してきましたが、一見して新規性、進歩性がない、単に他の分野でやっていたことを転用しただけ、あるいはこれまで人間 がやってきたことをシステム化しただけであったとしても、あきらめるのはまだ早いです。転用の場合でも、適用分野が異なれば、その分野特有の課題があり、 その課題を解決するために特定の手段を用いていることがしばしばあります。もしそうなら、そのような課題と解決手段を見つけることで、発明が発掘され、新 規性や進歩性を持たせることが可能になります。

B.他人の特許から自分を守る場合
ビジネスモデルは、過去の出願件数が少なく、刊行物に発表されていることも少ないため、特許庁が利用できる公知文献が少ないのが現状です。特許庁は、ビジ ネス特許出願のクレームの新規性を否定する公知文献が発見できず、出願を拒絶することができないため、結果的にビジネス特許出願は特許される可能性が高く なります。
自社のビジネスを守るためには、ビジネスモデル発明を出願することも重要ですが、自社が既に実施しているビジネスモデルや既知のビジネスモデルが、ある日 突然他人の権利とならないように、既知または実施されたビジネスモデルについて、特許庁が利用できる先行技術文献の形にしておくことも大切です。

99年11月29日の米国特許法改正により、「先発明者の防衛-First Inventor Defense」(ビジネス特許の効果的出願日の1年以上前に、その発明の主題を既に実施化し商業利用している者は、そのビジネス特許を侵害していないと される)を使って、“先使用権”が主張できるようになりました。“先使用権”を主張するには、自社が実施しているビジネスモデルを特定し、実施しているこ とを立証できるように準備しておく必要があります。

社内資料を保存する、作業日誌等の記録を残す、自社のビジネスの方法を刊行物に発表して公知文献にするなど、普段から立証のための記録資料や証拠資料をきちんとファイルするというプラクティスを社内で確立しておくことが大切です。

また、自社が侵害する可能性のある、他社のビジネス発明の出願または特許については、そ の出願または特許が無効であること(新規性がない等)を証明するため、証拠資料を集め、異議申し立てや無効審判に備えてファイルしておくことも大切です。 パンフレットやカタログ(日付が記載されていることが必要)等は、将来失われる可能性が高いため、証拠資料として保管することが必要となります。

方法が

なお現在の米国の審査動向を知ることは、将来の日本の審査動向を考える上でも参考になります。

1.特許の適格性(発明が特許の対象となるか)

米国においてビジネス方法が特許の対象として認められるためには、「有用な方法」である ことが必要です。さらにコンピュータ関連発明(ビジネス方法のほとんどがコンピュータ(ソフトウエア)を用い、しばしばネットワークを用いる)の有用性 は、クレームに記載された発明が「現実的用途」を有するか否かによって判断されます。特に発明の現実的用途が文言上クレームに記載されている場合は、発明 が現実的用途を有すると認められます。

米国特許庁の審査官用のトレーニングマテリアルの基準を参考に、発明が「現実的用途」を有するかどうかの判断基準をわかりやすく説明します。

たとえば、生命保険の保険料を最適設計する新しい計算手法を思いついたとします。

発明を「・・・の情報を入力し、生命保険の保険料を算出する方法」とクレームした場合、この発明は特許の適格性を有しないと判断されます(特許の対象となりません)。なぜなら、クレームの文言上、最適に計算された保険料の「現実的な用途」が記載されていないからです。

しかし、「・・・の情報を入力し、生命保険の最適な保険料を算出し、前記保険料の前記生 命保険の契約内容を表示する方法」とクレームすると、特許の適格性を有すると判断されます。なぜなら、表示された保険契約内容を見た保険販売員が、最適な 保険料の保険を顧客に販売することができるため、最適な保険料を表示することに現実的価値があると認められるからです。したがって、このクレームされた発 明は特許の対象として認められます。

また、「・・・の情報を入力し、生命保険の最適な保険料を算出し、前記保険料に基づいて 前記生命保険の契約を顧客と締結する方法」とクレームしても、特許の適格性を有すると判断されます。保険契約という「現実の取引」が記載されているからで す。このクレームされた発明も特許の対象となります。

このように、
(1)現実の取引に係わる処理を行う発明、及び
(2)現実的用途のある出力を行う発明

は現実的な用途があると判断されます。(1)の「現実の取引に係わる処理」には、商品、 サービス等の売買、契約、申込などの処理が含まれます。(2)の「出力」には、表示や印刷以外にも、データベースへの格納や、ネットワークを経由して他の コンピュータに送信され、そこで次の処理が行われることも含まれます。

したがって、新しい保険料の計算方法を思いついたとき、計算方法だけでは、特許の対象と はなりませんが、計算結果の出力先(計算結果の現実的な用い方)や、計算結果に基づく現実の取引まで、範囲を広げることで特許の対象となりえます。本質的 な発明は「保険料の新しい計算方法」にあるのですから、これに現実的な出力先や現実の取引を加えることは決して難しいことではありません。

このように米国では、クレームされた発明の「有用性」で特許適格性が判断されるので、ビジネスモデル特許は米国において成立し易くなっています。人間が一部に介在するような発明でも特許適格性を有するようになってきています。

これに対して、日本では、人為的な取り決めまたは経済法則のみを利用したに過ぎないビジ ネス方法はそれ自体では「発明」に該当しませんが、ビジネスモデルが全体として自然法則を利用していれば「発明」に該当します。ビジネスモデルがハードウ エア資源(コンピュータ、ネットワーク等)を使用したものであれば、自然法則を利用しており、「発明」に該当します。多くのビジネスモデルは、コンピュー タと、しばしばネットワーク(インターネット)を利用するものですから、特許の適格性の問題は実質的にはありません。しかし、米国と違って、あくまでも ハードウエア資源の使用を要求するため、米国よりもビジネスモデル特許の成立のハードルは高いと考えられます。ところが、最近特許庁は「インターネットな どで流通している音楽・映像のオンライン配信の手法や電子商取引の仕様など独創性のある技術やアイデアに、特許を認める方向で検討に入った。現在、特許権 の保護対象は記録媒体に書き込んだプログラムなどの「物」に限定しているが、技術の進展により記録媒体で把握し切れないケースも出ており、特許を広範に認 める欧米各国に追随する。」(2000年2月21日)と発表しており、日本の特許庁も米国特許庁の審査基準に追従する可能性が出てきました。

2.新規性と進歩性

1.では、発明が特許の適格性を有するかどうか(特許の対象となるかどうか)という問題を扱いました。発明が特許を取得するためには、発明が特許適格性だけでなく、新規性と進歩性を有することが必要です。新規性と進歩性について留意すべき点を述べます。

多数のクライアントから、「これは新しいビジネスです」、「業界初の試みです」、「ビジネス特許にならないでしょうか」という相談を受けます。業界として初めてであるということと、発明の新規性とは異なります。

発明の特許適格性については、上記のようにクレームの文言を工夫することにより、比較的 容易に条件をクリアすることができます。しかし、特許の対象となるからといって、特許を取得できるわけではありません。発明に新規性と進歩性があるかどう かは、そのビジネスモデルが、業界で初めてであるだけでなく、異種業界(他の分野)でも存在しなかった新規なものであるかどうか、他の分野における公知の ビジネスモデルを当該分野に適用した、単なる転用にすぎないかどうかを判断しなければなりません。

ビジネスモデル発明の場合、次の2通りがあります。

(1)既知のビジネス方法をシステム化したもの、又は
(2)新規のビジネス方法をシステム化したもの

(1)のように、既に公知のビジネス方法をコンピュータやネットワークを用いて行うだけ では、進歩性がないと判断されます。この場合、公知のビジネス方法をコンピュータ化するにあたって工夫した点(システム構成の工夫、処理手順の工夫等)を クレームすれば、進歩性を持たせることができます。

(2)のように、新規のビジネス方法をコンピュータやネットワークを用いて実現したに過 ぎず、システム上の工夫が何もない場合はどうでしょうか?ビジネス方法自体が全く新しく、どの業界を探しても公知文献がない限り、新規性、進歩性で拒絶す ることができませんから、特許される可能性があります。したがって、ソフトウエア上の工夫や、装置・システム上の工夫が全くなくても、ビジネス方法が新し いというだけで、特許が付与される可能性があります。これが最近、ビジネス特許が騒がれるようになった点です。

このように、発明したビジネスモデルが、他業界も含めてどこにもない、全く新規なもので あるとしたら、ソフトウエアやシステムの工夫がなくても、ビジネス方法自体が特許される可能性があります。しかし、このようなケースはまれであり、多くの クライアントが相談を持ち込まれるのは、既知のビジネス方法をシステム化したものである場合がほとんどです。「業界初」であったとしても、他の業界で行っ ていることであるなら、ビジネス方法自体の新規性はありません。その場合は、システム上の工夫を考えていくことで新規性、進歩性を持たせるようにします。 ビジネスモデル特許と言われるものの中には、ビジネス方法自体が新規であるのではなく、ビジネス方法を実現したシステムやソフトウエア上の工夫があるため に特許が認められているものも多いのです。

一見して新規性、進歩性がない、単に他の分野でやっていたことを転用しただけ、あるいは これまで人間がやってきたことをシステム化しただけであったとしても、あきらめるのはまだ早いです。転用の場合でも、適用分野が異なれば、その分野特有の 課題があり、その課題を解決するために特定の手段を用いていることがしばしばあります。もしそうなら、そのような課題と解決手段を見つけることで、発明が 発掘され、新規性や進歩性を持たせることが可能になります。

3.公知文献を証拠資料として集める

ビジネスモデルは、過去の出願件数が少なく、刊行物に発表されていることも少ないため、 特許庁が利用できる公知文献が少ないのが現状です。特許庁は、ビジネス特許出願のクレームの新規性を否定する公知文献が発見できず、出願を拒絶することが できないため、結果的にビジネス特許出願は特許される可能性が高くなります。

自社のビジネスを守るためには、ビジネスモデル発明を出願することも重要ですが、自社が 既に実施しているビジネスモデルや既知のビジネスモデルが、ある日突然他人の権利とならないように、既知または実施されたビジネスモデルについて、特許庁 が利用できる先行技術文献の形にしておくことも大切です。

99年11月29日の米国特許法改正により、「先発明者の防衛-First Inventor Defense」(ビジネス特許の効果的出願日の1年以上前に、その発明の主題を既に実施化し商業利用している者は、そのビジネス特許を侵害していないと される)を使って、“先使用権”が主張できるようになりました。“先使用権”を主張するには、自社が実施しているビジネスモデルを特定し、実施しているこ とを立証できるように準備しておく必要があります。

社内資料を保存する、作業日誌等の記録を残す、自社のビジネスの方法を刊行物に発表して公知文献にするなど、普段から立証のための記録資料や証拠資料をきちんとファイルするというプラクティスを社内で確立しておくことが大切です。

また、自社が侵害する可能性のある、他社のビジネス発明の出願または特許については、そ の出願または特許が無効であること(新規性がない等)を証明するため、証拠資料を集め、異議申し立てや無効審判に備えてファイルしておくことも大切です。 パンフレットやカタログ(日付が記載されていることが必要)等は、将来失われる可能性が高いため、証拠資料として保管することが必要となります。

4.最後に

ビジネスモデル発明の具体的な案件については、実際に発明の内容を伺いながら、発明とな りうるポイントを探すという作業が大切です。尚、ビジネスモデル発明の特許適格性については、龍華他「電子商取引(EC)発明の特許適格性」(「知財管 理」1999年8月)に詳しく書きましたのでご笑覧下さい。


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