マークマン判決に続くビトロニクス判決(CAFC)の影響

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マークマン判決に続くビトロニクス判決(CAFC)の影響

― 特許訴訟におけるサマリージャジメントの活用* ―

著者: パートナー  Carl G. Love
訳者: 弁理士  龍華 明裕(Ryuka)

 1996年5月の知的所有権レポートで述べたように、米国特許クレームの解釈は裁判官 のみが判断すべき純粋な法律問題であるとするCAFC(連邦巡回控訴裁判所)の判断を、最高裁判所は完全に支持した。しかしながら最高裁判所は、この役割 を裁判官がどの様に行うかについてのガイドラインを示さなかった。これとは対照的にCAFCは、マークマン判決において詳細な訴訟手続の方法を述べた。 CAFCは、今回ビトロニクス判決(Vitronics Corp. v. Conceptronic, Inc., 39USPQ2d 1573, CAFC 1996年)において、クレーム構成において裁判官が考慮できる証拠について注意を与えると共に、特許クレームの解釈における、内部証拠 (intrinsic evidence、対象の文書自体に含まれている証拠*)および外部証拠(extrinsic evidence、対象の文書自体には含まれていない証拠*)の適切な使用方法についての広範囲なコメントを述べた。裁判所は、特許訴訟の変化と、明細書 の記載および特許手続への影響を明らかにしつつある。

ビトロニクス訴訟の背景

 ビトロニクス訴訟で争われた用語は、回路基板の準備プロセスにおける、"solder reflow temperature"(はんだ付けリフロー温度)であった。特許権者のビトロニクスは、"solder reflow temperature"が最高リフロー温度、すなわち、はんだの液相限界温度より約15~30℃高い温度を意味すると主張した。ビトロニクスは主に、そ のような最高リフロー温度が用いられた実施例を含む明細書の記載を根拠とした。一方で被告は、問題の用語がより低い液相限界温度を意味すると反論し、専門 家の証言および業界の幾つかの技術記事を根拠として非侵害を立証しようとした。地方裁判所の裁判官は、公判での全ての証言を終えた後にこの用語の意味を解 釈し、クレームは低い温度を意図していたとして非侵害の結論を導いた。控訴審においてCAFCは、この判決は受け入れられない外部証拠に基づいたとして判 決を覆した。そして事件は、第一審裁判所へ差し戻された。

許容され得る内部証拠および外部証拠

 CAFCの分析は、記録に残された内部証拠、即ちクレーム、詳細な説明および特許商標 庁での出願経過をまず見なくてはならないという、広く確立された規則を繰り返した。この分析においては、一般的にクレームの用語には通常の意味が与えられ る。従って裁判所は常に明細書の記載を考慮する。また引用された先行技術文献(クレームの権利範囲に含まれない発明、同1577ページ)を含む出願経過を 考慮することもできる。

 CAFCは次に、外部証拠を「専門家の証言、発明者の証言、辞書、技術論文および技術 記事等の、特許および出願経過に対する付随的な証拠」と定義し、その使用を制限した(同1578ページ)。マークマンにおいてCAFCの大法廷は、「裁判 所は、特許の中で用いられた言葉の真の意味を正しく判断するために、裁量の範囲内で、外部証拠を採用することが出来る」と述べている。(52F3d980 ページ、下線は著者付加)。今回ビトロニクス判決においてCAFCは、特許商標庁での内部証拠が特許発明の権利範囲を疑いなく記述する場合には外部証拠に 依存することは不適当であるとした(同1577ページ)。CAFCはその理由を、「競合者は公の記録を検討し、クレーム構成の確立された規則を適用して特 許権者がクレームした発明の権利範囲を確定し、クレームされた発明を回避するように設計する」からであるとした(同1577ページ)。

 争われている用語を当業者がどう使用しているかを説明するために当事者が提出した先行 技術を、裁判所は、特許商標庁で引用されたか否かに係わらず裁量の範囲で受け取り、判断を依存することが出来る。特に、裁判官は技術をより良く理解するた めに技術文献および辞書を自由に調べ、自己の理解よりクレームを解釈することが出来るという点をCAFCは示した。しかし、クレームの権利範囲についての 発明者の意図を示す外部証拠は、特許商標庁での内部証拠に明示されていなければ、クレームの解釈に何の影響も与えないとCAFCは明白に述べた(同 1578ページ)。裁判所がクレームの意味を疑義無く判断できる程度に内部証拠が明確でないかまたは不十分である場合にのみ、裁判所はクレームを解釈する ために外部証拠を考慮することが出来る。

 また、クレームの用語を裁判所が解釈できる程度には特許庁の記録が十分でない場合にの み、クレーム用語の適切な解釈に関する専門家の証言が適切であるとした。CAFCはそのような専門家の証言の必要性が、「あるとしても希であろう...ク レーム解釈の鑑定証言は、最大の注意を払って扱わなくてはならない...」と述べた(同、1579ページ)。

ビトロニクスの実務への影響

 ビトロニクスの判決により、弁護士および裁判官の訴訟手続が革新される。クレームを解 釈するために、特許商標庁での記録に更に注意が払われつつ、マークマン判決に基づいたヒアリングが早い時期に行われるであろう。この過程における特許専門 家の役割ははっきりと定められた。「特許書類が不明確ではなときには、クレームの意味に関する専門家の証言は考慮されない。」(同1578ページ)

 更に重要なことに、ビトロニクスは特許明細書を作成し手続する者に明確なメッセージを 送っている。CAFCは、クレーム解釈のための第1の証拠は、クレームおよび詳細な説明自体であることを明確にしている。明確な用語が用いられていれば、 侵害者および特許権者のいずれも、外部証拠または専門家の証言を提示してクレームの意味を変更することができない(同1577ページ)。従って、適切な広 い範囲を有する所望の意味を詳細な説明の中に明確かつ正確に記載し、その意味をクレームの中で一貫して用いるように注意しなくてはならない。

 ビトロニクス判決およびマークマン判決の下での手続についてのご意見または御質問がございましたら、ご遠慮なくお送り下さい。
(* 訳者注)


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