米国における発明の新規性喪失の例外

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米国における発明の新規性喪失の例外*

- 連邦巡回裁判所(CAFC)が「実験的使用」についての指標を提示 -

1997年3月
著者: パートナー  Barry Grossman
    アソシエイト  Christopher Murphy
訳者: 弁理士  龍華 明裕(Ryuka)

 米国特許権を失うことなく発明を公然に試験するためにはどの様にすれば良いか?最近の3つの連邦巡回裁判所の判決が幾つかの指針を示している。

 米国特許法上の原則では、米国特許は米国内での販売の申出または発明の公然使用から1年以内に出願されなくてはならない。この1年の期間内に特許を出願しなかった場合には特許権を得ることは出来ない。しかしながら、「実験的」使用は、例え公然に行われていても、「公然使用」とは捉えられない。従って米国の特許権を危うくしない為には、公然に行われた試験が「実験」としての法的要求に合致する様に注意する必要がある。研究所で有望に見える発明であっても、発明が意図した目的のために機能すると発明者が確認するためにはしばしば公然に試験されなくてはならないので、この問題は頻繁に生じる。

 幾つかの基本的なルールに従うことにより、公然に行われた試験を、事実上の実験的使用とすることが出来る。3つの最近の連邦巡回裁判所の見解に示されるように、適切に書類で証明されずまたは適切に実験的使用を行わなかった場合は、特許権を失う場合がある。

実験の記録をつける

 実験的使用の妥当な目的は、その発明が意図した目的のために機能することを発明者が確認することである。実験の目的は、その発明の商業的可能性や需要者の反応を判断することではない。従って発明者は、目的に沿った実験記録をつけるはずである。

 Lough対Brunswick Corp.(86 F.3d 1113、連邦巡回裁判所. 1996)において、個人発明家のLoughは、海洋船後部に設けられる伝導装置用の改善されたシールを設計した。 Loughは6つの試作品を作り、シールが実使用で機能することを確認することを期待して、それらを無償で友人のボートに取り付けた。シールは彼が特許を出願する1年以上前に取り付けられた。残念なことにLoughは、このシールの使用が実験を目的としていたことを書面で証明することが出来なかった。公然使用を理由として特許を無効と判断する中で連邦巡回裁判所は、「実験であることの客観的証拠を示すことが出来なかったことに鑑みると、商業化していなかったことは...公然使用の問題の方向を決定付けない。Loughは試験の記録を何ら付けていなかった。」と述べた。

発明者が試験に関与しなくてはならない

 実験的使用の真の目的は発明が機能することを発明者が確認することであるから、発明者が実験を行いまたは指揮しなくてはならない。販売部門が関与するべきではない。Baxter International及びBaxter Healthcare Corporation対Cobe Laboratories, Inc.及びCobe BCT, Inc.事件(88 F. 3d 1054, 1060、巡回裁判所1996年)の中でCAFCは次の様に述べた。:    (実験を)行う者が、発明者又は発明者の指揮若しくは「監督」下の者ではない場合には、実験であることを根拠として(102条(新規性)の拒絶理由)を回避できる理由は無いと考えられる。

発明者が指揮しなくてはならない

 他の者、特に顧客と成り得る者が発明を使用することを許容する間、発明者はその実験を指揮し続けなくては成らない。例えば、発明者は発明が使用される条件を規定し、利用者に対して発明の性能のレポートを良いものも悪いものも定期的に提供することを求め、そして実験を監視、監督するために定期的に利用者を訪ねることが望ましい。発明者が実験結果に興味を有さない場合には、発明の公然な使用の目的が発明が機能するか否かを判断することであったと、後に発明者が論じることは困難になるだろう。

 Lough事件において発明者は、他のボートでシールがどのように動作するかを判断する必要があったから、友人によるシールの使用は実験的であったと議論した。連邦巡回裁判所は、Loughが彼の友人から何らフィードバックを得ようとしなかったことに注意して次のように述べた:

 指揮は極めて重要である。なぜならば、発明者が指揮していなかったら実験をしているのではなく...。試作品を、様々なレベルの機械技術者によって異なる条件のボートに取り付けることが望ましかったと論じはしない。しかしながら、これらの試験が公然使用ではなかったとしたら、Loughはある程度の指揮を続け試作品の使用からフィードバックする必要があった。

できれば秘密性を維持する

 秘密とすることに向いていない発明もあるが、実験の他の客観的状況証拠として「特許権者と試験を行っている者との間の守秘契約」が結ばれるべきである。

対価の支払によって実験的使用は完全には否定されない

 代償が無かったことは、発明の使用が商業的ではなく実験的であったことの客観的な証拠となる。しかし、製品が試験的であることを利用者が知っていれば、実験的な状態を失うことなく利用者から代償を得ることができる。

 Petrolite Corp. 対Baker Hughes, Inc.(96 F.3d 1423、巡回裁判所1996年)において、Petroliteは重要な特許権を失った。その理由のひとつは、特許権者が利用者に、販売された製品は試験的であることを通知しなかったからであった。PetroliteはQuaker Petroleumから特許権を購入した。購入の前であって出願日から1年以上前に、Quakerは製品を自己の顧客に販売していた。Quaker Petroleumは製品が実験的なものであると考えていた。Quakerが製品を実験的とみなしていたことの「強い証拠」にも拘わらず、連邦巡回裁判所は特許の無効判決を支持した。それは、「その発明が実験的であることをQuakerが購入者に知らせたという証拠がなかった」からである。何人かの購入者は、その販売が通常の商業的な取引であると理解していたと証言した。

発明が機能することを発明者が確認するのに必要な期間に実験期間を限定する

 実験的使用からいつ公然使用になるかは明確には定義されていない。しかしながら長期に渡り実験的に使用すると、発明は長い間証明されておりその後の使用は商業的であると主張するための証拠を被告に与えることとなる。そのような証拠に対して、発明者による自己に有利な(self-serving)供述で対向することはあまり助けにならないだろう。

 Petrolite事件において、公然使用の実験的目的は長い間満足されていたことを示唆する重要な証拠に直面して、原告は「発明者は追加フィールド試験が必要であったと感じた」と述べた。この見解を否定して連邦巡回裁判所は、「Petroliteの(実験的使用)の主張は、純粋な事実についての問題を提起できない。発明者の主観的確信は、それとは異なる内容を示す客観的証拠より重み付けすることはできない。」と述べた。

 以上の判決は実験的使用を評価するための実務的な指標を提供する。発明者が適切に実験を書類で証明し、実験に対する指揮を維持し発明を確認するために必要な期間のみに試験期間を限定することにより、公然な発明の使用が実験的使用と判断されるだろう。このような方法から離れる場合には、発明者は特許権を失うリスクを負う。

 実験的使用理論に関するコメント又は質問がありましたら御連絡下さい。

*は訳者注


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