クリアすれば、単一の出願をすることで、EU加盟国
全域(27ヶ国:2011年6月現在)で効力を有する(保
護を受けられる)商標権を生じさせる制度です。
「CTM」は、欧州共同体商標(Community trade
mark)の通称です。
欧州共同体商標意匠庁(通称OHIM)又は欧州各国
の特許庁への単一の出願をすることで、EU加盟国す
べてに出願されたことになります。

<登録できる商標>
「写実的に表現できる標識、特に、個人の名前を含
む語、模様、文字、数字、商品の形状又はその包装に
より構成することができるもの」で、かつ、「これらの
標識が、ある企業の商品又はサービスと他の企業のそ
れとを識別することができるもの」が登録できます。
「文字商標」や「立体商標」等に加え、日本では登
録できない「音響商標」や「動的商標(動きのある商
標)」、「ホログラム(レーザービームでプリントした立
体画像)」等も登録できます。
<登録できない商標>
主として以下に該当する商標は登録できません。
絶対的拒絶理由に該当する商標
EU加盟国のいずれか1ヶ国ででも、以下に該当
する商標は登録されません。
● 識別性(識別力)を欠く商標
● 商品・サービスの種類、品質、数量、用途、価格、
原産地、商品の製産の時期、サービスの提供の時期、
又はその他の特徴を示すために取引上使用されるこ
とがある標識若しくは表示のみからなる商標
● 通用語において又は公正かつ確立した商慣習にお
いて常用されるようになっている標識若しくは表示
のみからなる商標
● 立体商標の場合は、商品そのものの性質から生じ
る形状や技術的成果を得るために必要な商品の形状
等のみからなる商標
● 公共政策又は道徳規範に反する商標
● 公衆を、たとえば、商品若しくはサービスの性質、
品質又は原産地について欺くような性質の商標
相対的拒絶理由に該当する商標
先行商標(先に出願された商標)の所有者による
異議の申立があった場合に、以下に該当する商標は
登録されません。
● その商標が先行商標と同一であって、登録出願に
係る商品又はサービスと先行商標が保護されている
商品又はサービスとが同一である場合
● その商標と先行商標との同一性又は類似性及びこ
れらの商標の指定商品若しくはサービスの同一性又
は類似性のために,先行商標が保護されている領域
において公衆の側に混同を生じるおそれがある場合
※「混同のおそれ」には、先行商標との関連を生じるおそれ
が含まれます。
<出願~登録、更新まで>
出願
■ 出願は、欧州共同体商標意匠庁(通称OHIM)又
は欧州各国の特許庁などに対して行います。
■ 「出願日」は、欧州共同体商標意匠庁(通称OHIM)
が出願(願書)を受理した日、又は欧州各国の特許
庁が出願(願書)を受理した日となります。
■ 出願した時点で未使用の商標であっても、他の要
件を満たせば登録を受けられます。
■ EUに住所や営業所等がない出願人は、欧州共同
体商標意匠庁の代理人簿に記載されている代理人を
通して出願や手続をしなければなりません。
■ 国際登録出願(マドリッドプロトコル)のように
保護を希望する国を選択する必要はありません。
EU加盟国すべてに出願されたことになるからです。
後にEU加盟国が増えた場合は、自動的にその加
盟国にも保護が及びます。
■ 「Word mark」の欄にチェックすると、登録を求
める商標の書体が限定されません。
したがって、「Word mark」として登録を受ける
と、どのような書体で使用しても「商標の使用」と
なるので、不使用を理由に取消しがされるリスクを
減らせます。
■ 出願は、EUの公用語ですることができます。こ
の出願に使用する言語は「第1言語」と呼ばれます。
加えて、「第2言語」をOHIMの公用語から選ぶ
必要があります。
EUの公用語は22つあります。
ブルガリア語、チェコ語、デンマーク語、オラン
ダ語、英語、エストニア語、フィンランド語、フラ
ンス語、ドイツ語、ギリシャ語、ハンガリー語、イ
タリア語、ラトビア語、リトアニア語、マルタ語、
ポーランド語、ポルトガル語、ルーマニア語、スロ
バキア語、スロベニア語、スペイン語、スウェーデ
ン語です。
OHIMの公用語は5つあります。
英語、フランス語、ドイツ語、イタリア語、スペ
イン語です。
異議申立、取消審判、無効審判などは以下に示す
OHIMの公用語で行われます。
■ 商標について、自発的に「権利不要求(ディスク
レーム)」をすることができます。
明らかに識別力を有さない部分については、出願
する段階で「権利不要求(ディスクレーム。識別力
を有さない部分について独占権を主張しないこと)」
をすることで、拒絶理由通知を受ける可能性を下げ
ることができます。
■ 「多区分制」が認められているため、一出願(一
通の願書)で2つ以上の区分を指定することができ
ます。
審査
■ 方式審査と、原則として絶対的拒絶理由について
のみ審査がされます。
絶対的拒絶理由がある場合には、その旨が出願人
に通知され、出願人は意見書や補正書で応答・反論
することができます。
このとき、審査官が商標の識別力を有さない部分
について「権利不要求(ディスクレーム。識別力を
有さない部分について独占権を主張しないこと)」を
求めることがあります。
■ 相対的拒絶理由の審査は、異議申立がされた場合
のみ行われます。
ただし、先行する同一/類似の商標出願や登録があ
るかについては調査がされ、OHIMは出願人に調査
報告(サーチレポート)を送付し、先行商標の所有
者に通知します。
出願人が希望し、手数料を支払った場合には、商
標調査制度を採用しているEU加盟国の官庁も調査
報告を送付します。
ただし、フランス、ドイツ、イタリア、キプロス、
マルタ、スロベニア、エストニア、ラトビアなどで
は、調査はされません。
また、ある特定の国についてのみ、例えば、チェ
コのみについて調査を請求することはできません。
調査を請求すると、調査を行っているすべての国で
調査が行われます。
■ 調査報告(サーチレポート)が送付されてから約
1ヶ月で「出願公告」がされます。
異議申立
■ 相対的拒絶理由や、審査で見過ごされた絶対的拒絶
理由がある場合に「異議申立」をされることがあり
ます。
■ 異議申立ができる期間は、「出願公告」後3ヶ月以
内です。
■ 異議申立ができるのは、先行する同一/類似商標の
権利者などです。
■ 異議申立がされると、異議申立がされた商標の出
願人にその旨の通知がされ、2ヶ月の「クーリング
オフ期間(Cooling-off period)」が与えられます。ク
ーリングオフ期間は最大で22ヶ月まで延長できる
場合があります。
クーリングオフ期間内に当事者で交渉し、和解す
ることもできます。例えば、異議申立人の指定商品
と類似する指定商品を削除することと引き換えに異
議申立を取り下げてもらうといった方法があります。
当事者間で和解が成立すると、異議申立人が納付
した費用は返還されます。
登録
■ 「出願公告」がされた後に異議申立がされない場
合や、異議申立がされた場合でもその申立が取り下
げられたり、異議申立が認められなかった場合は、
商標が「登録」されます。
■ 「登録」によって商標権が発生します。
商標権の存続期間は、「出願日」から10年間です。
なお、日本の商標権の存続期間は、「登録日」から
10年間です。
更新
■ 商標の登録は、10年ごとに何度でも更新すること
ができます。
■ 更新の申請は、原則として保護が満了する月の末
日前6ヶ月以内に行う必要があります。
また、料金もこの期間内に支払わなければなりま
せん。
<取消しになる不使用の期間>
■ 商標が登録された後、指定商品・サービスについ
て、正当な理由なしに、継続して5年以上商標が使
用されていない場合には、官庁に対する申請に基づ
き又は侵害手続における反対請求を基礎として取り
消されるべき旨が宣言されます。
■ EU加盟国の1ヶ国ででも商標が指定商品・サー
ビスについて使用されていれば、不使用を理由とし
て商標が取消されることはないと言われています。
<費用>
■ 欧州共同体商標意匠庁(OHIM)の費用
商標登録出願料が必要です。
紙出願の場合(3区分まで)は、1,050ユーロ(123,900円(1ユーロ118円で計算))
電子出願の場合(3区分まで)は、900ユーロ(106,200円(1ユーロ118円で計算))
紙出願、電子出願共に、4区分以降は1区分につき150ユーロ(17,700円(1ユーロ
118円で計算))が加算
電子出願の場合(3区分まで)は、900ユーロ(106,200円(1ユーロ118円で計算))
紙出願、電子出願共に、4区分以降は1区分につき150ユーロ(17,700円(1ユーロ
118円で計算))が加算
なお、商標登録料(商標が登録された場合の費用)
は必要ありません(0円)。
■ 欧州共同体商標意匠庁(OHIM)の費用の他に、
日本及び現地の代理人費用が必要です。
<欧州共同体商標出願をする場合の注意点>
欧州共同体商標出願をする場合は、以下に挙げるメ
リット・デメリットを十分に考慮して行うことをおす
すめします。
特に、下記でデメリットとして挙げた「拒絶の効果」、
「取消・無効の効果」には注意しなければなりません。
欧州共同体商標出願(CTM)制度は、登録されれば
EU 加盟国全域で効力を有する商標権を取得できま
す。一方で、1ヶ国ででも拒絶理由があると登録を受
けられません。
したがって、出願前の調査がより重要になると言え
ます。

● 費用の節減
単一の出願(一通の願書)でEUの全加盟国に出
願でき、また現地代理人も一人で済むので、EU加
盟国の多くの国に直接出願する場合よりも費用が安
くなります。
● 手続の簡素化
単一の手続でEU加盟国すべてに出願されたこと
になります。
そのため、当所費用(日本の特許事務所の費用)
が、複数のEU加盟国へ直接出願した場合に比べて
安価になります。
● 権利管理の簡便化
商標登録後の更新や変更等の手続が一度で済み、
管理が簡易に行えます。
● 不使用を理由とした取消の回避が容易
加盟国の1ヶ国で商標を使用していれば、商標を
使用していないことを理由として商標登録が取り消
されることはないと考えられています。

● 拒絶の効果
EU加盟国のいずれか1ヶ国ででも拒絶理由があ
り、意見書や補正書によっても拒絶理由を解消でき
ない場合は、商標登録を受けることができません。
この場合は、各国ごとの出願に切り替えることが
できますが、新たに現地代理人費用が必要となりま
す。
● 取消・無効の効果
EU加盟国のいずれか1ヶ国ででも登録商標が取
消・無効になってしまった場合は、他のEU加盟国
での権利まで消滅してしまいます。
● 制約条件
EU加盟国のうちの数ヵ国だけを指定して出願
することはできません。
そのため、拒絶されてしまう可能性が高い国だけ
を除いて出願するといった方法が取れません。
● 審査
原則として、「相対的拒絶理由」に該当するか否
かは審査されません。
したがって、似ている商標について他人が先に
出願していた場合などは、異議申立がされたり、ま
た、登録された後であっても商標権侵害であると訴
えられる危険があります。
<「第1言語、第2言語の選択」のアドバイス>
前述したように、異議申立、取消審判、無効審判な
どで使用される言語はOHIMの公用語(英語、フラン
ス語、ドイツ語、イタリア語、スペイン語)です。
そして、出願人は第1言語 かつ/又は 第2言語を
OHIMの公用語から選択しなければなりません。
OHIMの公用語(英語、フランス語、ドイツ語、イ
タリア語、スペイン語)の中で、最もメジャーな言語
は英語です。
そのため、第1言語か第2言語で英語を選択した場
合は、他者から異議申立などの攻撃を受けやすくなり
ます。
次に、例えば第1言語でチェコ語(OHIMの公用語
でない言語)、第2言語でフランス語を選んでいた場合、
異議申立などで使用できる言語はフランス語だけにな
ります。
フランス語は、英語に比して母語とする人口が少な
く、「言語の壁」があります。翻訳を頼むとしても費用
と手間がかかります。そのため、先の例に比べて異議
申立などの攻撃を受ける可能性が低くなります。
以上から、英語以外の言語にも堪能な現地代理人を
通じて欧州共同体商標出願をすることを選択肢の一つ
として考えてもよいでしょう。
なお、国際登録出願(マドリッドプロトコル)制度
を利用して欧州共同体商標出願をすることもできます
が、この場合、願書は英語で作成されるため、第1言
語は「英語」となる点に注意が必要です。
<EU加盟国>
2011年6月現在、EU加盟国は、27ヶ国です。
ベルギー ドイツ フランス イタリア ルクセンブルク オランダ デンマーク
アイルランド 英国 ギリシャ ポルトガル スペイン オーストリア フィンランド
スウェーデン キプロス チェコ エストニア ハンガリー ラトビア リトアニア
マルタ ポーランド スロバキア スロベニア ブルガリア ルーマニア
アイルランド 英国 ギリシャ ポルトガル スペイン オーストリア フィンランド
スウェーデン キプロス チェコ エストニア ハンガリー ラトビア リトアニア
マルタ ポーランド スロバキア スロベニア ブルガリア ルーマニア
【参考文献】
特許庁HP












