欧州連合商標(EUTM)

欧州連合商標(EUTM)の概要

欧州で商標権を取得するためには、各国に出願をする方法と、欧州連合商標(EUTM)を欧州連合知的財産庁(EUIPO)に出願する方法とがあります。各国に出願をした場合、出願をしていない国では第三者が類似する商標を使用又は登録することができます。これに対してEUTMを登録すると、欧州連合(EU)の全域で商標を保護することができます。また、後にEU加盟国が増えた場合は、自動的にその加盟国にも保護が及びます。



<登録できる商標>

■ 「文字商標」や「立体商標」等に加え、「音響商標」や「動的商標(動きのある商標)」、「ホログラム(レーザービームでプリントした立体画像)」、「においの商標」等も登録を受けることができます。

■ 商標の中で明らかに識別力を有さない部分については、出願する段階で「権利不要求(ディスクレーム。識別力を有さない部分について独占権を主張しないこと)」をすることで、拒絶理由通知を受ける可能性を下げることができます。

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<出願~登録、更新まで>

出願

■ 「出願日」は、EUIPOが出願(願書)を受理した日となります。

■ 区分ごとに指定商品/役務を明確に記載する必要があります。ニース分類による包括見出し(クラスヘディング)を記載した場合、商品/役務の範囲は当該包括見出しの文言通りの商品/役務と解釈されることになるので注意が必要です。包括見出しの文字通りの意味に含まれない商品/役務は、全て明確に記載する必要があります。

■ 出願は、EUのいずれかの国の公用語ですることができます。この出願に使用する言語は「第1言語」と呼ばれます。
 加えて、「第2言語」として英・独・仏・伊・スペイン語の1つを選ぶ必要があります。

審査

■ 方式審査と、下記を例とする「絶対的拒絶理由」の審査が行われます。
● 識別性(識別力)を欠く商標
● 立体商標の場合は、商品そのものの性質から生じる形状や技術的成果を得るために必要な商品の形状等のみからなる商標
● 公衆を、たとえば、商品若しくは役務の性質、品質又は原産地について欺くような性質の商標

■ 絶対的拒絶理由がある場合には、その旨が出願人に通知され、出願人は意見書や補正書で応答や反論することができます。

■ このとき、商標の識別力を有さない部分について、審査官からディスクレームを求められることがあります。

■ 後述する相対的拒絶理由の審査は、異議申立がされた場合のみ行われます。

調査報告

■ EUIPOは、出願人が手数料を支払った場合、「先行する同一/類似の商標出願及び登録商標」(先行商標)の有無を調査します。そして、出願人に調査報告(European Union Search Report)を送付するとともに、先行商標の所有者に通知します。

■ 調査報告が送付されてから約1ヶ月で出願が「公告」されます。

■ 出願人がさらに手数料を支払った場合には、商標調査制度を採用しているEU加盟国の官庁も先行商標を調査し、出願人に国毎調査報告(National Search Report)を送付します。国毎調査報告を請求すると、商標調査制度を採用しているすべての国で調査が行われます。商標調査制度を採用していない国(フランス、ドイツ、イタリア、キプロス、マルタ、スロベニア、エストニア、ラトビアなど)では、国毎調査報告は作成されません。またある特定の国、例えばチェコのみの国毎調査報告を請求することはできません。

異議申立

■ 先行商標の所有者は、後願に対して異議を申し立てることができます。

■ 異議を申し立てられる期間は、出願の公告から3ヶ月以内です。

■ 異議が申し立てられると、商標の出願人にその旨の通知がされ、2ヶ月の「クーリングオフ期間(Cooling-off period)」が与えられます。クーリングオフ期間は最大で22ヶ月まで延長できる場合があります。

■ クーリングオフ期間内に当事者で交渉し、和解することもできます。例えば、異議申立人の指定商品と類似する指定商品を削除することと引き換えに異議申立を取り下げてもらうといった方法があります。

■ 当事者間で和解が成立すると、異議申立人が納付した費用は返還されます。

■ クーリングオフ期間に交渉が成立しなかった場合は「相対的拒絶理由」が審査されます。商標と商品/役務が先行商標と類似する場合は、登録を受けることができません。

登録

■ 異議申立がされない場合や、異議申立が認められなかった場合は、商標が「登録」されます。

■ 商標権の存続期間は、「出願日」から10年間です。
 なお、日本の商標権の存続期間は、「登録日」から10年間です。

更新

■ 更新の申請は、原則として存続期間が満了する月の末日前6ヶ月以内に行う必要があります。
 また、登録料もこの期間内に支払わなければなりません。

後願の排除

■ 後に類似する商標が出願された場合はEUIPOからの通知に応じて異議を申し立てる必要があります。

■ なお、先行登録商標を理由に異議を申し立てたとき、先行商標登録が異議対象である後願商標の出願日又は優先日から5年よりも前になされている場合には、同先行登録商標を使用していたことの立証を後願の出願人から求められる場合が多々あります。異議申し立て時には、この立証のコストを見込んでおく必要があります。

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<商標登録の取消と無効>

■ 登録後、過去5年間使用されていない商標の登録は、取り消され得ます。

■ 登録商標の所有者は後願の商標登録を無効とすべき旨の宣言を求めることができます。この宣言は、後願の登録商標が使用されていることを知ってから5年以内に求めなければなりません。

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<費用>

■ 庁費用: 出願時
区分 費用(ユーロ)
850
900
3以上 追加150 /追加区分
※なお、商標登録時には必要ありません(0円)。

■ 日本および現地代理人の費用は、複数のEU加盟国へ出願するときの費用より安価です。

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<EUTM出願をする場合の一般的なアドバイス>

 EUTM出願をする場合は、以下に挙げるメリット・デメリットを十分に考慮して行うことをおすすめします。


 費用の節減
 単一の出願(一通の願書)でEUの全加盟国に出願でき、また現地代理人も一人で済むので、EU加盟国の多くの国に直接出願する場合よりも費用が安くなります。
 不使用を理由とした取消の回避が容易
 加盟国の1ヶ国で商標を使用していれば、商標を使用していないことを理由として商標登録が取り消されることはないと考えられています。


 制約条件
 EU加盟国のうちの数ヵ国だけを指定して出願することはできません。そのため、拒絶されてしまう可能性が高い国を除いて出願するといった方法が取れません。
 拒絶の効果
 EU加盟国のいずれか1ヶ国ででも拒絶理由がある場合は、商標登録を受けることができません。
 この場合は各国ごとの出願に切り替えることができますが、新たに現地代理人費用が必要となります。したがって、出願前に類似商標を調査しておくことが重要です。
 取消・無効の効果
 EU加盟国のいずれか1ヶ国の先登録商標権者から、商標登録を無効とすべき旨が求められた場合も、EU加盟国全体で権利が消滅し得ます。

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<「第1言語、第2言語の選択」のアドバイス>

■ 異議申立は、出願時に選択された第1又は第2の言語で行わなくてはなりません。

■ そこで出願時に英語を避けておくと異議申立を受ける可能性が下がります。しかしこの場合は、出願時に英語以外の2つの言語に翻訳をする必要があるので出願費用が上がります。また異議申し立てに英語で応答をできないので応答費用も高くなります。更に異議を申し立てられなかった先登録商標の所有者が、後に無効の宣言を求める可能性も高まります。
 このため出願時には、概して、第1又は第2の言語として英語を選択しておくことをお勧めいたします。

■ 第1又は第2のいずれの言語で異議を申し立てられた場合にも直接対応ができる代理人又は事務所を選択する必要があります。例えば、イギリスの代理人は英語以外の言語に対応できない場合があります。一方でスペインの大手事務所の代理人は、通常は英語とスペイン語に対応できます。

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<EU加盟国>

■ 2016年6月現在、28ヶ国
ドイツ フランス イタリア オランダ オーストリア デンマーク スペイン ポルトガル ベルギー ルクセンブルク アイルランド ギリシャ フィンランド スウェーデン キプロス チェコ エストニア ハンガリー ラトビア リトアニア マルタ ポーランド スロバキア スロベニア ブルガリア ルーマニア クロアチア イギリス

注:イギリスがEUから離脱する動きがありますが、離脱協議が完了するまで従来通りイギリスはEUTM出願でカバーされます。
 しかし、離脱の正式決定後は、イギリスを指定してなされたEUTM出願又は登録の効果はイギリスに及ばなくなる可能性があります。この場合、既存のEUTM出願又は登録の効果を引き続きイギリスに及ぼさせるための移行措置が取られると思われます。また新しい情報が入り次第、アップデートいたします。

 代表的な非加盟国 : スイス ノルウェー アイスランド リヒテンシュタイン



【参考文献】
特許庁HP


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