インド特許庁への他国情報の提出

2018.07.19
弁理士・米国弁護士 龍華 明裕

1.法的要件

2.当所の対応(ご提案)
(1)インド出願から6月以内の対応(特許法8条(1)(a))
 以下の表を含む陳述書(規則12様式3)と、宣誓書を特許庁へ提出します。

(2)特許付与までの対応 (特許法8条(1)(b))
 特許法8条(1)(b) の「随時(time to time)」を「6か月」と考えるインド特許事務所がありますが「6か月毎」の根拠は、法律、規則および判例のいずれにも存在しません。またそのような解釈は、提出対象がインド出願「後」の出願の情報に限定されている事、および提出期限が外国出願から6カ月以内と定められていること(規則12(2))と矛盾します。

 従って、インド出願後に外国で出願を行ったときと、最初の拒絶理由通知に応答するときにのみ、全外国出願の最新の情報を再提出することをお勧めいたします。(同意見:Kan & Krishme特許事務所、Lakshmikumaran & Sridharan特許事務所他)。なお、外国で分割出願や継続出願を行った後も6月以内に陳述書を再提出する必要があるので注意が必要です。

(3)要求から6月以内の対応
 OAで要求された書類をOA応答時(但し要求から6月以内)に提出します。通常は、下記の書類を提出すれば要求を満たしますが、毎回OAを注意深く読む必要があります。
・新規性調査報告、国際調査報告書、国際調査見解書
・拒絶理由通知書、拒絶査定、特許査定等のオフィスアクション(OA)
・登録または拒絶されたクレーム
・以上の審査書類の英訳(手元にある場合)
 なお審査官が「主要特許庁」の書類を提出することを要求した場合は、IP5(US, EP, KR, JP, CN)、(および他国でよりクレームを減縮した場合はその国)の書類を提出し「他の国の審査書類を希望される場合はご要求ください」と記載することをお勧めします。

① 最初のOAで審査書類が要求されていない場合
 この場合も、OA応答時に審査書類を提出することをお勧めします。審査に協力し有効な特許を取得するためです。ただし近い将来にグローバルドシエが更に普及し、審査官が自主的に他国の審査結果を見るようになった場合は、要求された場合にのみ提出をすれば足ります。

② 審査書類の英訳
 インド特許庁に提出する書類は英語またはヒンズー語である必要があります。しかし翻訳費用は高額なので手元に英訳が無ければ、コンピュータ訳を提出した上で提出書類に”Human translationが必要であれば作成しますのでご指示ください”と記載することをお勧めします。

 確かに、他国の出願情報を最後まで提出しなかった場合には、インド特許が取り消されています3。一方で両面印刷された情報の片側のみが提出されていた場合でも、背景事情に鑑みて、欺く意図はなかったとして取り消しを逃れています4。これらのコモンローの特徴に鑑みると、実際に行った手続きの内容だけでなく、手続きの過程が「誠実」であったと立証できることが重要です。

3.検討のお願い
 インド特許出願に対して、以上の手順で手続を進めてよいかご確認の上、ご指示ください。ご不明な点がございましたら、お伺いしてご説明いたしますのでどうぞご連絡ください。

以上
(捕捉)

1.概要
 上記2.(2)の代替案として、審査開始の少し前にのみForm 3を提出する案もあるが、コスト低減メリットよりリスクのデメリットの方が大きい。多数の分割出願又は継続出願が予定されているケースのみで審査開始の少し前にForm 3を提出する方法も考えられるが、2つの方法を使い分ける複雑さにより手続きミスの可能性が高まるというデメリットがある。

2.インド出願の審査状況
 下記のサイトで調査できる。ただし2017年2月28日現在、下記サイトは利用できない。
http://www.ipindia.nic.in/
→ Dynamic Utilities
→ http://www.ipindia.nic.in/e-gateways.htm#dynamic-utilities
→ RQ status of issued FERs

3.メリット
 インド出願から「審査開始の少し前」までの間に、海外で平均1.7件以上の分割出願又は継続出願を行うならコストが下がる。
(コスト計算の仮定条件)
①8(1)(a)後「審査開始の少し前」までに海外で行う分割出願又は継続出願の件数: n
②Form 3の提出にかかる費用: 49,000円/回(現地費用+弊所費用。庁費用ゼロ)
③審査開始時期調査及びその期限管理の費用: 3,000円/回
④Form 3の提出までの審査開始時期調査の回数: 3回
⑤期限途過後のForm 3の提出の庁費用: 160 US$ = 18,000円(1 US$ = 112.5円)
⑥期限途過後の提出に対して審査官が追加の書類の提出を求める確率:2割(未調査)
 Rule 138、Rule 137により提出を審査官が求め始めている。
⑦上記⑥に対応するための費用:24,500円(上記提出費用の半額)
(コスト比較)
分割/継続出願ごとに提出する合計費用 >審査開始の少し前に提出する費用 とすると、
49,000 x n>3,000 x 3 + 49,000 + 18,000 + (18,000 + 24,500) x 0.2 = 84,500
  ∴ n> 1.7

4.デメリット
(1)基礎12(2)の期限を意図的に破っているので、万が一提出すべき情報の漏れ等のミスが発覚した場合に、手続きの過程が「誠実」でなかったと認定されるリスクが高まる。
(2)「審査着手の少し前」から「最初の拒絶理由通知」までの間に海外で分割出願又は継続出願を行った場合は、別途Form 3を提出する必要がある。そのため、その間の手続きの管理工数と、情報の提出漏れのリスクが高まる。
(3)インド特許庁の上記サイトが利用できない場合、審査状況が調査できない。



1up to the date of grant of patent in India, he would keep the Controller informed in writing, from time to time, of detailed particulars as required under clause (a) in respect of  every other application relating to the same or substantially the same invention, if any, filed in any country outside India subsequently to the filing of the statement referred to in the aforesaid clause, within the prescribed time.
2Order 207 of 2012, VRC Continental vs. Uniroyal Chemical, IPAB(知的財産審判委員会)
 Order 166 of 2012, Tata Chemicals Ltd. Vs. Hindustan Unilever Ltd, IPAB
3Richter Gedeon vs. Cipla, Indian Patent Office, 2010
 Chemtura vs. Union of India, Delhi High Ct., 2009
4Koninklijke Philips vs. Sukesh, Delhi High, Ct, 2013