米国特許庁への商標登録の効果

2021.02.15



弁理士・米国弁護士 龍華 明裕



商標使用による商標保護(コモン・ロー上の保護)
 米国では商標を使用することによって自動的に商標権が発生します(先使用主義)。ただし類似する商標を他人が先に使用していたことを知っていた場合(悪意である場合)は保護が認められません。また保護範囲は商標を使用している地域、及び出所の混同が生じる地域に限られます。

特許庁への登録の効果(Lanham法による保護)1
 コモン・ロー上は、異なる人が異なる地域で同じ商標を使用すると、それぞれがその地域で商標権を得る虞があります。これを防ぐために、米国特許庁へ商標登録することで商標権の存在が全米に通知されたと擬制しています(constructive notice)(22条)。この擬制により、その後に類似する商標の使用を開始した者が、コモン・ロー上の商標権を得ることができなくなります。

 米国特許庁へ登録した商標の所有者は、商標を全米で使用する独占権を有すると推定されます。しかしこの推定は覆される場合があります。例えば、登録されても使用されていない商標や、一定期間使用が中止された商標の排他権を行使することはできません。

■特許庁への登録による他のメリット
(1)商標権の有効性の推定(7条(b)、33条(a))
   ・商標を登録することにより、登録者が米国で最初に商標を使用した者と推定されます。
     →侵害訴訟において、登録商標権者は商標権の有効性を立証する必要はなく、
      当該商標権の効力を争う者に立証責任が課されます。
(2)最初の使用日の擬制(7条(c))
    商標登録されると、出願日までに商標を使用していたと擬制されます(constructive use)。

(3)不可争性(incontestable)の獲得(15条)
   ・登録後、商標を「継続的に」使用して5年経過すると、第三者が当該商標登録の
    有効性を争うために主張できる事由が限定されます。
(4)連邦登録された商標を関税局に申請すると水際取り締まりの対象となります(28条)

 ご不明な点がございましたら、どうぞご遠慮なくご連絡ください。   以上


1 各州にも商標登録に関する独自の制度が存在します。しかし保護範囲が州内に限られるので日本企業が使うことは殆どありません。