共同出願時の留意事項
弁理士 淡谷 浩平
1.共同出願によって生じる制約
日本での制約
共同出願により特許権が共有されると、他の共有者の同意を得なければ権利を譲渡できず(第33条3項、第73条1項)、実施を許諾することもできません(第33条4項、第73条3項)。関連会社等に特許製品を「製造」させる場合も、共有者の同意を得る必要があります1。ただし貴社が販売した製品を関連会社等が再販または使用することは制約を受けません2。
各共有者は本来、差止請求権(第100条)等を単独で行使することができますが、実際は共有者と合意をした上で権利行使をすることが多いです。とりわけ大手企業やお客様との共同出願においては、現実問題として、相手の意向を鑑みる必要が生じる場合が多いので、権利行使にも制約を受けます。
米国での制約
各共有者が単独で第三者に実施を許諾することができます。このため、関連会社に製造や輸入を委託することもできます。一方で、各共有者は単独で特許権を行使することができません。Ethicon v. United States Surgical Corporation 135 F.3d at 1465-66
中国での制約
各共有者が単独で第三者に実施を許諾することができます。このため、関連会社に製造や輸入を委託することもできます。
独国での制約
各共有者が単独で第三者に自己の持分を譲渡することができます。
他の国
外国では現地法人や業務提携先などの、共有者以外の者が製品を輸入・販売する場合が多いですが、かかる行為は共有に係る特許権を侵害するおそれがあります。具体的に侵害に該当するか否かは、①各国の法律、②共有者間の契約、③共有者と外国の者の関係、④日本の特許と外国の特許の同一性などによって異なりますので、個別にご相談ください。
2.RYUKAのご提案
複数の人が共同で発明を行った場合は、全員が共同で出願しなくてはなりません(特許法第38条)。しかし前述のように、共同出願には多くの制約があるので以下を検討することをお勧めします。
発明に関与した相手の貢献を調査する
発明は技術的思想の創作ですから、技術的思想の「創作」に関与した者が共同発明者です。「創作」に関与していない、単なる管理者、補助者、資金提供者等は共同発明者でありません。相手が技術的思想の創作に貢献していない場合は共同発明ではないので単独で出願することをお勧めいたします。
相手の貢献の新規性を調査する
発明の創作に関与したとしても、提供した着想やアイデアが新規でなければなりません(第29条1項)。例えば、秘密保持義務なく提供され又は公然実施された技術には新規性がないので、その技術を紹介したに過ぎない者は共同発明者でありません。この場合も、単独で出願することをお勧めいたします。
共同発明の場合は、請求項の必要性を検討する
共同出願しなければならない共同発明の請求項を除外し、単独で作られた発明部分のみを単独で出願することを検討することをお勧めいたします。単独で作られた発明と、共同で作られた発明とを、異なる2件の特許出願に分離して、前者を権利行使のために、後者を相手に満足してもらうために出願する場合もあります。
共同出願にする場合
国内外の第三者に特許製品を製造させる可能性がある場合は、共同出願人との間で予め発明の実施に関する契約書を作成することをお勧めいたします。契約書の作成をご希望の場合は、どうぞご連絡ください。
2貴社の販売によって特許権が消尽する(用い尽くされる)からです。