米国における商標の使用証明の提出時期

2021.02.15



弁理士・米国弁護士 龍華 明裕

 米国では実際に使用している商標のみが保護されます。このため出願した商標を実際に使用している証明(宣誓書面と使用証拠)を、定期的に米国特許商標庁に提出する必要があります。

1.提出時期

(1) 登録前
 (A)使用意思に基づいた出願
 出願前に米国で商標を使っていない場合は、使用意思を宣誓して商標出願をすることができます。しかし許可通知(登録を認める旨の通知)を受けとってから6か月以内に使用証明を提出しなければなりません。なお、この期間は6カ月ずつ、最長で3年間延長できます。この間に使用証明を提出しなかった場合は、商標登録を受けることができません。

 (B)外国登録に基づいた出願
 日本での商標「登録」に基づいて米国へ出願をした場合は、登録前に使用証明を提出する必要がありません。一方、日本の商標「出願」に基づいて米国へ出願をした場合は、米国で登録される前に日本で商標が登録されるか、または米国出願後に「使用意思に基づいた出願」に変更する必要があります。

 (C)マドリッド協定に基づく国際商標登録出願
 米国を指定した場合、使用意思の宣言書(MM18)(使用証拠不要)を出願時に提出する必要があります。

 (D)米国での実使用に基づいた出願
 出願時に使用証明を提出します。提出をしなかった場合は提出が命じられ、その応答期限までに提出をできます。

(2)登録後
 (1)のいずれの場合も、米国の登録日から5~6年の間(6カ月間延長可)、及び10年ごとに使用証明を提出しなければなりません。提出しないと米国の商標登録が取り消されます。従って審査期間を加えて、米国出願から6~7年の間に米国で商標を使わない恐れがある場合には、出願後に登録を遅らせることをお勧めします。方法については、別途お問い合わせください。

2.使用証拠
 宣誓には、商標を使用している全ての商品・役務を記載し、一部の使用の証拠を添付します。すべての指定商品・サービスについて証拠を提出する必要はなく、クラスごとに一部の商品・サービスについて証拠を提出すれば足ります。

 (1) 商品に使用したことの証拠(例)
 ・商標が付された商品の写真・カタログ
 ・商品のラベルやタグに商標が付されている場合はその写真
 ・販売目的の商品と直接関連があるバナー、ウィンドウディスプレイ、メニュー、カタログ
 (※条件付きで認められます。)

 (2) サービスに使用したことの証拠(例)
 ・商標と関連する広告・ウェブサイト 等

3.誠実に宣誓することの重要性
 米国はコモンローの国なので、権利を得る過程に虚偽や不正があった場合には、司法(裁判)による救済が著しく制限されます(クリーンハンドの原則)。また米国には広範な情報開示(ディスカバリー)の制度があるので、過去の虚偽や不正が裁判で明らかになります。

 商標を使用していると宣誓した商品またはサービスの一部について、実際には商標が使用されていなかった場合、現実に使用をされていた商品・サービスについても商標権を行使できなくなる恐れがありますので、十分にご注意下さい。

以上