アメリカ特許規則改正の概要
最終規則公表日:2007年8月21日
規則改正施行日:2007年11月1日
Ⅰ.継続出願とRCEの回数制限(今回の改正で初めて導入された重要改正点)
・一つの出願ファミリーの中に、出願人の権利として得られるのは以下のみ
(ア) 初期出願(原 or 分割)×1
(イ) 継続出願(①または②)×2
(ウ) RCE×1
・ただし、仮出願は対象外。また、分割出願は新たな、別個の初期出願として扱われる
・上記の数を超える継続出願を望む場合、上申書(※)を提出しそれが承認されなければならない。(例外:1.78 (d)(1)(iv), (v))
※上申書の内容の例 ―― 過去になされていない補正、反論、証拠等を考慮してもらうため。何故、以前に提出しなかったかの理由を述べる。
※上申書提出の理由に含まれない場合:
・IDSの提出(IDS手続きについては別途改正の予定)
・一部クレーム認可時に他のクレームで継続
・その他300件のコメントに対する回答も参照
・出願人は、限定要求の提案(Suggested Requirement of Restriction: SRR)が可能。
・新規則適用対象出願と例外規定
(1)2007年11月1日以降の出願(及びPCTのUS移行)とRCE
→11/1までは現行規則に基づき何回でも継続やRCEが可能。
(2)2007年8月21日以前の出願(及びPCTのUS移行)は、2007年
11月1日以降に“もう一回 (one more)”だけ継続出願が可能。
※但し、8/21 – 11/1の間に継続出願がされていないことが条件。
※なお、RCEにはこのような例外規定はない。
Ⅱ.簡易継続出願 (Streamline Continuation Application) の導入
・出願人の申請で、新規の継続出願ではなく、中間処理中の出願として扱われる
・親出願は放棄する必要あり
・審査される順番が早い
→RCEをしたがまだ継続は1回以下のときに、RCEの代替として有効
Ⅲ.クレーム数の制限-5/25ルール
独立5つまで、全体で25個まで → 5/25ル-ル
・一つの出願だけではなく、権利者が共通(commonly owned)で特許的区別ができない(patentably indistinct)他の継続中の出願のクレームも合わせた合計数が制限される。
→自明型二重特許となる関係の出願の合計。
・11/1までに第1回目の拒絶 (1st Office Action) を受けていない全出願が対象。
・5/25ルール違反の通知を受けた後の対応
(1)SRR(Suggested Restriction Requirement)限定要求案
※但し11/1以前にFAOM未発行出願のみ
(2)ESD(Examination Support Document)審査支援書
(3)クレームキャンセル
・ESDに必要な内容
[1]先行技術調査の方法と結果
[2]クレームと類似する引例のリストアップ
[3]各引例におけるクレーム限定要件の特定
[4]特許性の説明
[5]明細書でのサポート箇所の指摘
※ESDの提出は、コストと禁反言の両問題をはらんでいる(see E&A memo)
・5/25ルールが適用される出願
1.2007年11月1日以降の出願(PCTのUS移行)
2.2007年11月1日までに最初の拒絶理由が発行されていない出願
Ⅳ.「共同所有の関連出願」の情報提供義務
「共同所有の関連出願」の定義:
[1]互いの出願日あるいは優先日が2ヶ月以内 (within two month)
(外国優先権主張日、仮出願日を含む)
[2]少なくとも一人の共通発明者 (at least one inventor in common)
[3]共同所有 (owned by the same person)
上記を満足する出願または特許の番号を、係属中の各出願にて情報提供する義務
・情報提供期限:出願日から4ヶ月、願番通知書から2ヶ月のいずれか遅い方。なお、現在係属中の案件の期限は、上記のいずれか、あるいは2008年2月1日まで。
・以下の条件を満たす場合、少なくとも一つのクレームは特許的に区別されない
(not patentably distinct)と推定される(反駁可能)
→いったんは5/25クレームルールが適用される
[1]出願日(あるいは優先権主張日)が同日
[2]共通発明者がいる
[3]所有者が共通
[4]ほぼ重複する記載を有している
上記の4点を満たす場合、次の両方を提出しなければならない。
(a)ターミナルディスクレーマ
(b)特許的区別可能 (patentably distinct) であると主張する反論陳述書
・提出を怠った場合:特に罰則規定はない。実際上、次回審査で発覚した場合は最終(Final)とされるほか、衡平法上の問題となる(IDS義務違反と同じ)
Ⅴ.CIP出願時のクレームの優先権特定義務
・クレーム毎に、優先権出願にサポートされていることを特定する義務。
-龍華国際特許事務所からの対策案・コメント-
Ⅰ.今、11月1日までにしておくことはあるか?
→理由:11/1までに初回拒絶理由通知書が出れば5/25ルールは適用されない。
Q1 - 11/1までに継続出願するべきか?
A1 - 急く必要はない。すぐに継続出願するべき他の理由がなければ、慎重に検討すべき。
理由:今継続すると、11月1日後に“もう1回”の恩恵は得られない。また、この例外措置は「一つの出願ファミリー」で1回のみである。従って、どのタイミングで、どの案件でこれを使うか、を慎重に検討すべき。
Q2 - 11/1までにRCEをすべきか?
A2-1 最終OAを受け、ファミリー出願内で過去に1度でもRCEがされている案件の場合:
→すぐにRCEするかどうかを決定し、するなら11/1までにすべき。
理由:11/1以降はもうできない。
A2-2 最終OAを受け、過去にファミリー内で1度もRCEしていない案件の場合:
→RCEするかどうか、するとしたらいつか、どの案件でするか、慎重に検討するべき
理由:11/1の前でも後でも、権利としてできるのは1回のみ。急ぐ必要はない →理由:11/1までに初回拒絶理由通知書が出れば5/25ルールは適用されない。
Q3 - Restriction / Electionを受けてまだ応答していない案件はどうするか?
A3 もしあれば、すぐ応答すべき。
→理由:11/1までに初回拒絶理由通知書が出れば5/25ルールは適用されない。
Ⅱ.弊所が提案する対策・戦略
-継続・RCE回数制限に対し-
(1)米国の審査を遅らせる
(理 由)OAの回数を少なくするため、対応国の審査結果を反映させる
(方 法)
→PCT経由の出願にする
→米国仮出願を利用する(特に米国で生まれた発明の場合)
(2)対応国の審査を促進する
(理 由)より多くの先行技術を机上に乗せる
(方 法)
[1]韓国:出願時に審査請求(9ヵ月後にOAが期待できる)
[2]日本:早期審査(3ヵ月後にOAが期待できる)
[3]EP:各国よりEPとし、ESRを期待
(GB、DEの場合は別途検討要)
[4]中国:日本登録査定後にそれを伴って審査請求(参照される)
(3)予備補正
各国の審査状況を考慮し、適正クレームで初回審査に臨む
(4)各出願毎の基本戦略を策定しておく
(P型)できるだけ長く係属させる(他社侵害を取り込む)
(V型)5/25以上のクレームが必要(多角的権利が必要な製品)
(W型)対応国の審査結果が出揃うまで待つ
(N型)上記したような特段の位置づけがない(継続2回あれば十分)
-5/25ルールに対し-
(5)同一日本出願を優先権主張して複数の米国出願(patentably distinct)
(6)日本出願時、PCT出願時からこのルールに則ったクレームをドラフト
(7)あえてdistinctなクレームで出願した上でSRR
-関連出願提出義務等に対して- (8)日本出願日をずらす(記載がほぼ重複していない場合)
(9)重複部がある場合、同日に日本出願し(EPのself collision対策)、indistinctクレームを入れ込まない(各々に互いにdistinceクレームのみとする)例)カテゴリーを変える。
(10)プログラムソフトを作る
-主要DBとは異なるものを作る。再改正の可能性有り
機能
・関連発明の検索(日付、発明者)
・別紙にプリント
・米国現地代理人への指示書プリント
・IDSの再確認
・柔軟な対応ができる余地を残す
(11)国内事務所の一本化(可能であれば)
→ポートフォリオ、DB作成、維持管理を委託
Ⅲ.弊所ではお客様サービスの一環として、以下の情報の提供をいたします。
(1)顧客ごとに上記プログラムを作成
(2)関連出願」情報の現地代理人への提供と提出指示
ただし、
(a)2001年1月1日以前に出願された情報、および
(b)2006年1月1日以降の優先権主張日を有する出願の情報
はお客様から弊所へのご提供をお願いいたします。
なお、もしご要望がございましたら、費用につきまして別途ご相談させていただいた上で、下記のサービスも提供いたします。
①お客様が直接あるいは-弊所以外の国内事務所経由で米国出願された案件について、上記の各情報
②各出願における対処策のご提案
Ⅳ.最後に
ご意見、ご質問がございましたらご遠慮なくご連絡ください。