米国への早期出願の戦略

2005.03.15

1.米国への早期出願の重要性
①「米国出願」より一年以上前にその発明が公知であると出願が拒絶されます(米国特許法102条(b))。この「米国出願」の日は実際に米国へ出願した日(または国際出願日)であり優先権は働きません(同119条(a)後段)注1。このため、米国で特許される可能性を高めるためには、早期に米国出願または国際出願を行う必要があります。
②「米国出願」をすると、その後に、本願の記載から容易に考え得る発明を他人が行った場合でも、その他人は自己の発明の特許を得ることができなくなります(同 102条(e), 他の必要条件も有)。この「米国出願」の日も、実際に米国へ出願した日(または英語で国際出願した日)であり優先権は働きません(同条(e)(1))。このため他人の米国特許を排除するためにも、早期に米国へ出願することが大切です。

2.日本語による米国仮出願の活用
しかし、日本出願後に内容を補充してから各国へ出願すると米国出願の日が遅延します。そこで日本語による米国仮出願を最初の出願にすると、米国代理人費用と特許庁費用を含め15万円程度の追加費用で「米国出願」の日を確保することができます。この場合、日本その他の国へは、米国仮出願に基づく優先権を主張して一年以内に出願します。

米国仮出願の翻訳文は、米国への本出願と同じ時期(仮出願から1年4月後まで)に提出すれば良いので(37CFR1.78(a)(5))、仮出願と本出願に重複する部分の翻訳費用は削ることができます。

3.早期審査請求の活用
特許性が不安な場合は、上記の米国仮出願と共に日本へ出願し、米国仮出願に基づく早期審査を日本で請求することで、通常、米国で仮出願の翻訳や本出願を行う前に、日本の審査結果を得ることができます。早期審査の費用は、先行技術の調査費用及び特許庁費用を含めて25~30万円です。審査結果に応じて外国の手続を中止することで、米国等における無駄な翻訳費用や出願費用を抑えることができます。

ご利用の詳細については各担当者にお問い合わせください。


注1 文献が公開された日から一年以内に同じ発明を米国へ出願すると、「出願日」が遅いという理由(米国特許法102条(b))では拒絶を受けません。ただし、本発明の「発明日」が、文献の発明が知られたときよりも遅いと、「発明日」が遅いという理由で拒絶されます(同条(a))。このため本発明の発明日を証明できるように準備しておくことも大切です。
 発明日は、研究ノート以外の書類でも立証することができます。例えば、「発明の提案書」を作成した日、提案書を特許部または特許事務所に送付した日、そして提案書の内容を証明できるように準備しておくことが大切です。