国際登録(マドリットプロトコル)出願の概要 ~直接出願との比較~

2020.09.14
弁理士・米国弁護士 龍華 明裕

マドリットプロトコル(”マドプロ”と略します)出願とは

各国で異なる言語で出願しなくても、日本特許庁への手続きにより国際事務局に国際登録することで、指定国での商標保護を求めることができる制度です。主要国の殆ど(2020年1月現在で122か国)を指定できますが、香港、マカオ、アルゼンチンなどはマドプロへ加盟していないので直接に出願する必要があります。

マドプロ出願のメリット
(1)日本特許庁への手続きだけで多数国への出願が完了します。願書に記載する指定商品又は役務も英語で統一
   され、各国の言語に訳す必要がありません。
(2)出願時に現地代理人の費用がかからないので、複数国に出願する場合はコストを削減できます。
(3)1つの登録番号で管理されるので、世界の権利管理が容易です。
(4)更新、名義変更も日本特許庁に行えば足ります。
(5)指定国官庁が18ヶ月以内に拒絶を通知しない限り、国際登録日から指定国で保護を受けられます。その
   ため登録の時期を見積もりやすく、予算とブランディング戦略を決めやすくなります。これと比較して、
   例えば南米などでは登録の時期を見積もることが困難です。
(6)国際出願時に指定しなかった国を、国際登録後に追加することもできます

マドプロ出願のデメリット
(1)マドプロ出願の基礎となる、本国での出願/登録が必要です。外国のみに出願したい場合はマドプロ出願を
   利用できません。
(2)基礎の出願/登録が国際登録日から5年以内に消滅した場合は、国際登録が取消されます(セントラルア
   タック)。
(3)商標は基礎の出願/登録と完全に同一でなければなりません。
   指定商品又は指定役務も基礎の出願/登録で指定している範囲内でなければなりません。
(4)出願時に各指定国の代理人のアドバイスを受けずに出願するので、指定国から拒絶理由通知(マドプロ出
   願では暫定拒絶通報と呼ばれます)を受ける恐れが高まります。
   ただし出願時より暫定拒絶への応答時に指定国の代理人からアドバイスを受ける方が、コスト対効果が高
   いので、通常は指定国の代理人のアドバイスを受けずにマドプロ出願します。
(5)中国では、国際商標登録後にも類似する商標が誤って登録されることがあるので、類似商標が誤登録され
   るのを監視して異議を申し立てる必要があります。このため中国へは直接に出願することをお勧めいたし
   ます。

マドプロ出願の庁費用
下記に弊所の費用が加算されます。
○日本特許庁         9、000円
○国際事務局
  基本手数料        653スイスフラン(色彩のある場合は903スイスフラン)
  追加手数料        100スイスフラン/区分(4区分目から)
  付加手数料/個別手数料  100スイスフラン/指定国

マドプロ出願/直接出願のいずれにおいても、商標制度が脆弱な国へ出願する場合には、権利の実効性を事前に
確認する必要があります。特にマイナーな新興国への出願をご希望の場合には、事前にお気軽にご相談ください。

以上