中国・商標制度の概要

2019.04.03
弁理士・米国弁護士 龍華 明裕

1.出願
(1)出願人の名称や住所なども中国語に翻訳しなければなりません。出願人の正式な中国語表記を予め決めておくと、後で中国語表記を修正することが避けられます。

(2)出願人企業の登記簿謄本の写し及び代理人への委任状(写しの提出可)を願書と同時に提出しなければなりません。追って提出をできないので、早めに準備をする必要があります。

(3)願書、登記簿謄本の写し及び委任状には、出願人の押印(社印、代表者印、知財部長印等)又は署名が必要です。

(4)日本では出願書類を発送した日が「出願日」となりますが(発信主義)、中国では商標局が出願書類を受領した日が「出願日」となります。優先権を主張するときに注意が必要です。

2.商標
(1)文字、図形の他、立体的形状、色彩の組合せ及び音声も登録の対象となります。団体商標や証明商標(商品又は役務の原産地、原材料等を証明する商標)も登録を受けられます。

(2)カタカナ、ひらがな等で出願した場合は意味の説明を求められることがあります。

(3)例えば以下の商標は、登録されません。
● においの商標、単一色の商標、動く商標(アニメーション)
● 立体商標の場合は、商品自体の性質により生じた形状、技術的効果を獲得するために必要な形状又は商品に実質的な価値を具備する形状の商標
● 他人の著名商標を複製、模倣又は翻訳したもので、同一又は類似する商品について使用すると混同を引き起こしやすい商標
● 中国で登録されている他人の著名商標を複製、模倣又は翻訳したもので、使用をされると公衆を誤認させ、著名商標権者の利益に損害を与える商標
● 地理的表示を含み、その商品が表示された地域の原産ではなく、公衆を誤認させる商標

3.指定商品/役務
(1)標準の記載
 1つの申請で複数の区分について出願することができます。ただし部分拒絶の通知を受領した場合を除き、分割出願及び商標権の分割は認められません。指定商品/役務の包括表示は認められません。新しい概念の商品やサービスでなければ、拒絶理由を避けるべく、中国商標局から毎年1月に発行される「類似商品及び役務区分表」に記載されている指定商品/役務名を記載することをおすすめします。なお指定商品/役務が10を超える場合は、指定商品/役務1つ毎に60RMBの庁費用がかかります。

(2)保護範囲の相違
指定商品/役務の表記が同じでも日本と保護範囲が異なることが多いので注意が必要です。
  
① 例えば、日本では指定商品として「第25類 被服」と記載すれば、「帽子」も保護対象に含まれます。一方、中国では指定商品「被服」についての商標権は「帽子」に及びません。

② また例えば、日本では「界面活性剤」と「工業用化学品」は、共に第1類、類似群コード「01A01」に分類されており類似と判断されます。一方、中国ではこれらは非類似と判断されるので「界面活性剤」に対して商標を登録しても、他人が「工業用化学品」に対して同じ商標を登録できます。そのため「工業用化学品」に対する商標の使用が商標権侵害として訴えられる可能性もあります。

(3)区分(クラス)の相違
同じ商品/役務でも日本と中国とでは区分が異なることがあります。特に、第29類、第30類では日本と中国との相違が大きいので注意する必要があります。

(4)類似群コード(サブクラス)
 中国にも類似群コードがあります。審査では、類似群コードが同一であるため商品/役務が互いに類似する、あるいは類似群コードが異なるため非類似であると判断されても、裁判では逆の判断がされることがあります。例えば「自動車用の潤滑油」と「自動車用のモータ」は類似群コードが異なるので審査では非類似とされたものが、裁判では類似とされたことがあります。

(5)実務上の対応
上述の例からもわかるように、日本で出願した商標の指定商品/役務を中国の代理人に伝えて出願をするだけでは、保護の範囲に漏れが生じます。実際に中国で使用/提供する商品/役務を現地代理人に伝えて指定商品/役務とそれらの区分を検討し選択する必要があります。

4.審査と登録
(1)すべての登録要件が審査されます。なお日本の「早期審査」に相当する制度はありません。

(2)日本では、一部の指定商品/役務に拒絶理由がある場合に出願人が対応をしなければ、出願全体が拒絶されます。一方、中国では出願人が対応しない場合でも、拒絶理由のある指定商品/役務に係る部分のみを拒絶する旨(部分拒絶)が通知されます。拒絶理由のない指定商品/役務に係る部分は公告され、異議申立がされないか不成立であれば登録されます。出願人は、部分拒絶の通知を受領した日から15日以内に分割出願をすることができます。

(3)出願商標に類似する引用商標がある場合には、引用商標の所有者より得た併存同意書を提出して拒絶理由を解消できる場合があります。

5.公告及び登録
(1)異議申立
 商標が登録要件を満たした場合は、出願が公告(公開)されます。いわゆる「権利付与前」異議制度が採用されています。なお日本は「権利付与後」異議制度です。公告後3月以内に、異議を申し立てることができます。ただし異議申立人の資格に一定の制限が課されます。

(2)登録
 異議申立されない場合、又は異議申立が不成立の場合は、商標が登録されます。
 商標権の存続期間は、登録日から10年間です。

6.登録商標の取消し
(1)取り消し
 登録商標を継続して3年間使用していない場合には商標局が取消を命じることがあります。

(2)損害賠償請求時における使用義務
商標権侵害による損害賠償を請求するときにも、過去3年間に中国で登録商標を使用していた必要があります(第64条)。商標権者が、登録商標を使用することなく、商標を高額で売りつけるべく商標権侵害訴訟を提起した場合には、不使用の抗弁を行うことができます。一方で商標権者としては、損害賠償請求に備えて登録商標を使用した証拠を保存しておくことが重要です。

7.国際登録出願の注意点
■ 国際登録出願で中国を指定できます。
■ 出願人の名称や住所などを中国語に翻訳しなければなりません。
■ 直接出願と異なり、指定商品/役務が10を超えても商標局の費用は追加されません。
■ 国際登録出願の審査期間は、国内出願より長いですが、国内出願に比べて審査が通りやすい傾向があります。
■ 指定商品/役務の包括表示ができます。
■ 権利を行使するためには、中国語の保護証明書を申請する必要があります。
■ 国際商標登録後に類似商標が誤登録されることがあります。これを防ぐためには、中国で出願をするか、類似商標が登録されるのを監視し誤登録に対して異議を申し立てる必要があります。

8.庁費用(1RMB=16円で計算)
■ 出願時:300RMB×1区分
※1商品役務ごとに加算する金額:30RMB ×(10を超える指定商品/役務の数)
■ 登録時:0

以上


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