2024年インド特許規則改正

2024.08.29
弁理士・米国弁護士 龍華 明裕

2024年3月15日に、インド特許規則の改正が施行されました。主な変更点をまとめましたので、ご参考ください。

1. 外国情報提出義務の緩和

外国出願の情報 (Form 3)

従来は、インド出願時に提出できなかった外国出願の情報を、外国出願から6月以内にインド特許庁へ提出しなければなりませんでした(旧規則12(2))が、上記情報をインドの最初の拒絶理由通知(OA)から3月以内に提出すれば良くなりました。

外国出願の審査書類

インド特許庁長官が外国出願の審査書類を要求をした場合、出願人はこれを提出しなければなりません。この要求が,従来は最初のOAにいつも記載されていましたが、今後特許庁は自力で検索し、必要な場合のみ要求することになりました。ただし,従来は要求から6月だった提出期限が,2月に短縮されました。

 上記の規定は、出願済みの案件にも適用されます。インド特許庁への他国情報の提出要件をご参照ください。

2. 分割出願

分割出願からさらに分割出願することが可能になりました。


3. 出願審査の請求

出願審査の請求期限は、優先日から31月になりました。ただし、法改正の施行日(2024年3月15日)以前に出願(PCT経由の場合は国内移行)した案件には、従来の48月の期限が引き続き適用されます。


4. 新規性喪失の例外

インド特許法29条〜33条は、新規性喪失の例外の各種パターンを規定していますが、従来は具体的な手続が定められていませんでした。今回の改正で、31条の新規性喪失の例外(展覧会での展示と論文発表)を適用するためには、Form31(新しく導入した書類)を提出し、費用を納める必要があると明らかにしました。


5. 登録前異議申立

異議理由のヒアリング

特許庁長官はヒアリングを行い、異議申立人から異議理由を聴取することができるようになりました。ヒアリングから1ヶ月以内に、特許庁長官は異議申立てを棄却するか、一時的に認容するか(prima facie acceptance)を決定し、その理由を記載しなければなりません。

手続

登録後異議の規定(費用の負担、ヒアリングへの出席通知等)は、登録前異議にも適用されます。

出願人の陳述

異議申立ての通知を受け取った出願人は、2月以内に陳述書と証拠を提出しなければなりません。


6. 実施報告制度

登録の翌会計年度から3年ごと

従来、特許の実施報告書(Form 27)は、特許登録の翌年度から毎年度提出しなければなりませんでした。今回の改正により、報告書の提出頻度は3会計年度(4月~翌年3月)に1回と改正されました。提出期限は、当該3会計年度の満了から6月以内です。例えば、2024年4月2日に登録された特許については、2028年9月30日までに初回の実施報告書を提出すれば足ります。

昨年提出済みの場合(2024年8月updated)

前回の報告書提出から1、2年度しか経過していない特許にも、登録の翌会計年度から起算して3会計年度ごとに提出すべきかについてインドの特許事務所間で意見が分かれていました。
最近、インド特許庁が公式見解を示し、2023年5月31日以前に登録された有効な特許については、形式上「登録から3会計年度」が到来したとしても、Form27を提出する必要がなく、2026年9月31日までに、2023年度〜2026年度分の使用証拠を提出すれば足りると明らかになりました。
詳しくは、インド特許庁のFAQをご覧ください:Office of the Controller General of Patents, Designs & Trade Marks

In respect of patents granted before 2022-23:
As per the Patents (Amendment) Rules, 2024, window period for filing of Form-27 in respect of a period of three financial years, i.e. FY 2023-24 to FY 2025-26, without extension of deadline will be 1 st April, 2026 to 30th September, 2026.

In respect of patents granted in 2022-23:
Window period for filing Form-27 without extension of deadline will be 1st April, 2026 to 30th September, 2026.


7. 期間の延長・徒過救済制度

延長の対象

Form4を提出することで、全手続に最大6ヶ月の延長(extend)、期限徒過の場合は6ヶ月以内の救済(condon)が認められます。従来、以下の期限は延長/救済の対象外でしたが、今回の改正でその除外規定が削除されました。
・国内移行期間
・審査請求期間
・最初の審査報告への応答期間
・PCT出願の翻訳文提出期間
・優先権書類及びその翻訳の提出期間

費用

1ヶ月延長毎に50,000 INR(約94,000円)という高額な延長手数料がかかります。

 
ご不明な点等ございましたらご遠慮なくお問い合わせください。
 
参考:インド特許庁の公式通知