米国におけるソフトウエア発明の特許適格性 (Enfish v. Microsoft判決と審査官用メモ)

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2016年7月13日

米国におけるソフトウエア発明の特許適格性 (Enfish v. Microsoft判決と審査官用メモ)



  本年5月にCAFCは、データベースのインデックス構造の発明が「抽象的概念」に該当しなく特許の適格性を満たす(特許法101条に違反しない)と判断しました(Enfish v. Microsoft, CAFC)。これに基づき米国特許庁(USPTO)は審査方法についてのメモ(注意)を審査官に配布しました。これらの概要と実務上の対応方法をご紹介いたします。

対象特許:USP 6,151,604 Claim 17
 対象のクレームは以下の通りです。
「コンピュータメモリのための、データを格納しおよび取り出すシステムであって、
 論理テーブルに従って前記メモリを構成する手段を備え、前記論理テーブルが:
 複数の論理行であって、各論理行が当該論理行を識別するオブジェクト識別番号(OID)を有し、前記論理行の各々が情報の一つのレコードに対応する、複数の論理行と、
 前記複数の論理行と交差して複数の論理セルを定義する複数の論理列であって、各論理列が当該論理列を識別するOIDを含む、複数の論理列と、
 当該テーブルに格納されたデータへインデックスする手段と
 を有するシステム。」

CAFCの判断
 まずCAFCは、特許法101条に違反する可能性がある「抽象的概念」を、コンピュータ能力を高める発明から切り離しました。「まず請求項に記載された発明が、コンピュータ能力を具体的に改善するか、(経済活動等の)抽象的概念のプロセスに対してコンピュータを単なるツールとして用いるかを問う(べきである)。」「汎用コンピュータで実行できる発明であることが、請求項が特許適格性を有さないことを決定付けるという(地方裁判所の)判断には同意をできない。」

 そしてCAFCは、本発明はコンピュータ能力を高める発明であるとしました。「本件において請求項の焦点は、 コンピュータの機能そのものの向上であり、コンピュータを通常の能力範囲で経済その他のタスクに用いるものではない。むしろ自己参照テーブルによって、コンピュータの動作を具体的に改善する。」

 上記の判断においてCAFCは、明細書に記載された発明の効果に言及しました。「我々の判断は、次の明細書の記載によって支持される。『クレーム発明は、従来のデータベースと比べて、自由度の向上、検索時間の短縮、必要とされるメモリ量の低減等の利点をもたらす。』」

TLI Communication vs A.V. Automotive
 上記判決と前後してCAFCは、「電話ユーザーが画像の分類を入力し、この分類と画像とを電話がサーバーに送信し、サーバーがこれらを保存しておき分類を用いて画像を検索する」発明について特許の適格性を有さないと判断しました(TLI Communication vs A.V. Automotive)。Enfishの発明と比較すると、この発明は明らかに、技術的な課題と解決方法に欠けています。これら2つの判決とUSPTOの審査ガイドラインに記載された、特許の適格性を有すると判断された発明と、適格性を有さないと判断された発明の相違点は明確です。

USPTOのメモ
 両判決を受けてUSPTOは 本年5月に審査官向けのメモを発表しました。該メモは、両判決を説明した上で以下の様に述べています。「コンピュータ関連技術を改善する発明は、これまで抽象的概念とされてきた発明と同類でない可能性が大きい(likely not)。」

101条拒絶理由への対応策
 USPTOのメモにも示唆されているようにEnfishは実務に大きな影響を与えます。

 先にUSPTOの審査ガイドラインで紹介をされていたDDR判決にも鑑みると、コンピュータやインターネットに特有の課題があれば、それらを解決する手段は101条に違反されないと判断される可能性が高まりました。従ってまず発明面談では、一見ビジネス方法の発明に見える場合でも、そのビジネス方法を実施する際に特有の、コンピュータやインターネットに特有の課題を探し出すことが大切です。その上で、それらを解決する手段としてクレームを起草することが勧められます。

 Enfishにおいては、コンピュータやインターネットに特有の課題を解決する旨の明細書中の記載が引用されました。明細書の記載が重要であることが明らかになったので、明細書にはこれらの課題と、それらを解決した効果を記載しておくことをお勧めいたします。その上で意見書では、DDRまたはEnfishのクレームと本願発明とが同類であることを説明した上で、DDR、Enfishの判決で示された言葉と、それらを紹介するUSPTO審査ガイドラインと、前記メモの言葉を引用して、特許の適格性を説明することが有効です。

面談の活用
 101条の判断については、USPTO暫定ガイドライン及びメモで多くの説明がされていますが、これらを正確に把握していない審査官も多いのが実態です。このため101条についての出願人の主張を理解しにくいかもしれません。また発明が解決しようとする課題が、インターネットやコンピュータに特有の課題であることを理解することも、比較的難しい場合があります。これらの場合は、面談が有効に働く場合が多いと思います。

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