特許をコストから利益に変えるために 

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「特許マーケティング」

 - 特許をコストから利益に変えるために -

1999年2月8日
弁理士 龍華 明裕

目  次

 1.特許マーケティング
   (1)特許権の3つの目的(使い方)
   (2)特許の取得方法は目的により異なる
   (3)特許マーケットの分析
   (4)商品マーケティングとの比較
   (5)米国進出前に米国特許を取得する
 2.権利化すべき発明
 3.特許調査と設計変更
 4.特許権を取得するために
 

1.特許マーケティング(コストからプロフィットへ)

    日本は世界1の出願大国(60万件/年) cf.米国40万件/年

    商品としての特許権と、ビジネスとしての権利行使。

 (1) 特許権の3つの使い方(権利を得る目的)

  ① 競合会社の排除

    自社利益が大きく、自社特許が強い場合に適する

  ② 利益を上げる

    他社利益が大きく、自社特許が強い場合に適する

  ③ クロスライセンス

    自社利益が大きく、他社特許が強い部分と

    他社利益が大きく、自社特許が強い部分がある場合に適する

    目的は1つとは限らない。

    →各出願とその特許請求の範囲(クレーム)を目的 & 相手ごとに作る。

 (2) 特許の取得方法は目的により異なる

  ① 自社の製品を守ることを目的とする場合

      守る技術:自社が使う技術と、その 置換技術 

      出願国 :自社が販売する国と、 他社が製品を作る国 

      権利行使の代表例: 差止 

        従って特許の 権利範囲が広い ことが大切。

    cf.デッドコピーの防止 権利範囲は狭くて良い。 著作権も有効。 

      著作権侵害を証明するための工夫も大切

      交換部品用特許:必ずその構成が必要であれば、権利範囲は狭くても有効

  ② クロスライセンスを目的とする場合

      守る技術: 特許競合会社 が使う可能性が高い技術と、その置換技術

             必ずしも自社が使う技術である必要はない       

      出願国 : 特許競合会社 が製品を製造、使用、又は販売している国 

      権利評価方法:米国では 各特許のライセンス料 (損害賠償額を意識している)

      日本では 特許件数 の場合も多い (ライセンスにおいて差止を意識している)

             従って米国では 各特許のライセンス料が大切、

             日本では 件数 も大切な場合が多い。

      日本の将来動向: 損害賠償引き上げ→ライセンス料Up→特許使用目的変化 

               → 従って今から出願の内容を変える必要がある     

        富士通    「有効特許」を分類

        リコー      経常利益の10%を特許収入に

        NEC      3年後の技術収支目標 100億円/年

        トヨタ自動車  今後は権利を正当に評価し、行使する。

  ③ 特許により利益を上げることを目的とする場合

      守る技術: 他社 が使う技術と、その置換技術

      出願国 : 他社 の利益が大きくライセンス料率 が大きい国→米国

            米国における平均ライセンス料率 約10 %

            米国における、特許権者に有利な2つの制度

            (1)Discovery    (2)陪審員制度  

         日米間の文化の相違(?)と、ゲームの理論

          → スピード違反や駐車違反が多いのはなぜか

          → 特許権も無視される場合が有る。

      権利行使の代表例: ライセンス(将来の実施)と損害賠償(過去の実施)

      発明の金銭的価値: 侵害前 初期コスト価値、ロット価値

       ライセンス料: 販売数 x 単価 x 料率(利益率等による)

       従って特許権は カバーする製品の販売総額 が大きいことが大切。

         →より多く売れる製品、より高い製品、より利益率が高い製品

         例: CD-ROM 対 システム、  特定システム 対 汎用システム 

 (3) 特許マーケットの分析

    特許権を得る目的を明確にするために、発明が対象とする製品と特許のマーケットを分析する。

    代表的な 相手 を想定する。 → 複数でも可。  

   ①  競合会社を排除するための特許出願

   ②  特許で利益を上げるための出願

   ③  クロスライセンスのための特許出願

   ④  防御

      有利な鑑定書を得ておく。 設計変更。

      相手の特許を無効とするための資料を集める。

      ライセンスを受ける(事業提携、権利を買う等を含む)。

        他社を、国毎、相手毎に図面にプロットする。

      自社を、国毎、大まかな技術分野毎に図面にプロットする。

           特許は、自社が相手をカバーする(であろう)権利と、

                他社が自社をカバーする(であろう)権利のみを対象とする。

      注意:自社の製品を守る発明は危険領域の防御に有効でない場合がある。

         → ③又は④の対応が必要。

 (4) 商品マーケティングとの比較

   ① 共通点

      マーケットの大きさ、成長率の分析

      マーケットの利益率、将来利益率の予測

      自己マーケットにおける相手の強さの分析

      販売(権利取得)すべき国の分析

      製造力(技術力)と営業力のバランス

   ② 相違点

      製品開発(権利取得)のコストが小さい。

      営業(法的対応)のコストが小さい。

        特許営業力の育成方法  国 毎、 目的 毎の 実務経験 

        営業部員(ライセンススタッフ)の数

        NEC:3年後に100億円の技術収支目標(利益目標)に対して 20 人 

      海外進出(外国での権利取得)にかかるコストが小さい。

      法則: 自社販売額は相手の強さに比例する。

        販売額:    国 毎、 大まかな技術分野 毎の総販売額

        相手との比較: 相手  毎、 国  毎に、

                製品利益 及び 相手をカバーする権利 を比較する。

       例 典型的な例  日立 対 モトローラ 

        一般的には:   

         大企業×小企業  小企業が有利 

         企業×個人    個人が有利  

          ex. レメルソン(画像処理)、カーンズ(間欠ワイパー)、ジャンコイル                      

         国内×外国  国内のみで販売している方が、米国では強い。                       

         → 小企業、個人、米国へ進出していない企業の特許に注意
 

 (5) 米国進出前に米国特許を取得し活用する

        訴訟に強い企業ランキング(90年、日経産業新聞):

        日立、IBM、日本電気、TI、ソニー、デュポン

          → 経験が大切

          → 被告としてではなく原告として経験を積む

 
2.権利化すべき発明

 (1) 自社の技術

    法則.技術の単純さは特許の価値に比例する。

     例1:使い捨てカメラ: 裏蓋部分。シャッター部分      

     例2:間欠ワイパー:  カーンズ氏 $2200万       

     例3:日清食品:    カップヌードル             

    ソフトウエア発明の留意事項

   ①   見える部分を守る                      

   ②   不変の部分を抽出する                   

     ex .ウインドウ表示の場合:

   ③ 早い出願(特に米国)                       

   ④ 提案書作成日の立証(ラボノートでなくても立証は可能)  

(2) 製品(サービス)競合対策

   自社の技術を競合会社がどの様に利用するかを考察する。

(3) 特許競合会社が必要とする技術

   訴えられた時の反撃&クロスライセンスのため(個人や小さな企業に対しては有効でない)

(4) 製品競合会社と特許競合会社の相違点

   製品競合会社と特許競合会社でもある場合が多いが、

   製品競合会社のみが特許競合会社であるとは限らない。

   特許上は、むしろ小さい競合会社に注意する必要がある。

 

3.特許調査と設計変更

 (1) 2つの調査方法

    ① 会社名     による特許調査(相手が分かっているとき)と、

    ② 技術キーワード による特許調査(相手を探す。既知の相手の特許をしぼる) 

 (2) 調査結果の開発者への回覧

      侵害するおそれがある場合の対応

    ①  特許部へ連絡する。 米国:弁護士の鑑定を得る→3倍賠償を避ける。

    ②  設計変更                            

    ③  訴訟の準備 (無効資料/対抗特許出願)              

 (3) 特許の回覧による付随効果

      業界の動向を知る  何を開発 何を権利化 ← 会社名調査

      技術を習得する

      何が特許となるかを知る  添付資料:シティバンクの例

 

4.特許権を取得するために

 (1)何が特許になるか

     業界の特許出願に親しむ

     ex.シティバンク:電子マネー特許に続く米国特許が成立

     「トラスティッド・エージェント・フォー・エレクトロニック・コマース」

 (2)アイデアをまとめる

     アイデアを提案する時期

      仕様作成時 と 出荷前 

      出荷後:×  出荷前のみ:×  技術の完成時のみ:×

 (3)特許部と力を合わせる

     商品動向の検討

     特許マーケットの検討

 (4)発明報奨制度の最近の動向

     ソニーの場合

     武田薬品の場合

 (5)外部の弁理士と効果的に協力するために何をすべきか

     発明者から弁理士へ伝える情報

      本発明の内容、新規な部分、置換技術、商品マーケット     

     特許部から弁理士へ伝える情報

      特許マーケティング情報、特許の目的             

     特許事務所利用時の注意

      ビジネスパートナーとなり得る特許事務所を選び/パートナーを育てる

おわりに

 (1)図書紹介

    技術者のための特許相談  松原 治     発明協会

    国際特許摩擦と日本の選択 山川 政樹   東洋経済新報社

    ソフトウエア特許実例     龍華 明裕 他 関東書院

 (2)このセミナの一つの目的

 (3)攻める立場と守る立場

 (4)まだまだ低い日本の特許意識

 (5)技術先進国日本の進むべき道

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