中国商標出願の概要

<登録できる商標>

  • 文字、図形の他、立体的形状、色彩の組合せ、及び音声も登録の対象になります。2014年5月1日から、音声が商標として登録を受けられるようになりました。
  • サービスマーク(役務)や団体商標も登録を受けることができます。

<登録できない商標>

    例えば以下の商標は、登録を受けることができません。
  • においの商標、色彩だけの商標、動く商標(アニメーション)
  • 識別力を有さない商標
  • 他の者が先に取得した権利と衝突する商標
  • 立体商標の場合は、商品自体の性質により生じた形状、技術的効果を獲得するために必要な形状又は商品に実質的な価値を具備させる形状である商標
  • 他人の著名商標を複製、模倣又は翻訳したもので、同一又は類似する商品について使用すると、その著名商標と混同を引き起こしやすい商標
  • 中国で登録されている他人の著名商標を複製、模倣又は翻訳したもので、それが使用されると、公衆を誤認させ、当該著名商標権者の利益に損害を与えることになる商標
  • 地理的表示を含むもので、その商品が表示された地域の原産ではなく、公衆を誤認させる商標

<出願>

  • 願書は中国語で記載する必要があり、出願人の名称や住所なども中国語に翻訳しなければなりません。出願人の正式な中国語表記を予め決めておくと、後で中国語表記を修正することが避けられます。
  • 多区分出願が認められており(2014年5月1日改正)、1つの申請で、多数の区分について同一の商標を出願することができます。ただし、後述する部分拒絶の通知を受領した場合を除き、分割出願及び商標権の分割は認められていないため、注意が必要です。
  • 出願人企業の登記簿謄本の写し及び代理人への委任状が必須です。
    委任状の写しも認められますが、願書と同時に提出しなければならず、追って提出することはできないので注意が必要です。
  • 願書、登記簿謄本の写し及び委任状には、出願人の押印(社印、代表者印、知財部長印等)又は署名が必要です。
  • 指定商品/役務の記載
    指定商品/役務を具体的に記載することが求められます。包括表示は認められません。
    新しい概念の商品やサービスでなければ、できるだけ、中国商標局から毎年1月に発行される「類似商品及び役務区分表」に記載されている指定商品/役務名を記載することをおすすめします。
  • 指定商品/役務の数が10を超える場合には、1つ増える毎に追加の費用がかかります。
  • 日本では出願書類を発送した日が「出願日」となりますが(発信主義)、中国では商標局が出願書類を受領した日が「出願日」となります(到達主義)。

<審査>

  • すべての登録要件が審査されます。
     日本の「早期審査」に相当する制度はありません。
  • 登録要件を満たさない場合(拒絶理由がある場合)
    説明又は補正が要求されます(2014年5月1日改正)。これは、日本の拒絶理由通知に相当します。出願人は、説明又は補正の要求を受けてから15日以内に意見書及び補正書を提出することができます。
  • 補正書等によっても拒絶理由が解消されない場合は、拒絶する旨が通知されます。これは、日本の拒絶査定に相当します。拒絶する旨の通知に対して審査官に直接反論することはできず、反論の機会を得るには審判を請求する必要があります。
  • 審判は、拒絶する旨の通知を受領してから15日以内に請求しなくてはなりません。外国人でも期間を延長できないので注意が必要です。
  • 日本では、一部の指定商品/役務に拒絶理由がある場合に出願人が何ら対応をしなければ、出願の全体が拒絶されます。
    一方、中国では出願人が対応しない場合でも、拒絶理由のある指定商品/役務に係る部分のみを拒絶する旨(部分拒絶)が通知されます。拒絶理由のない指定商品/役務に係る部分は公告され、異議申立がされないか、異議申立が不成立であれば登録されます。
  • 部分拒絶が通知された場合、出願人は、部分拒絶の通知を受領した日から15日以内に分割出願をすることができます(2014年5月1日改正)。

<公告、登録>

公告と異議申立

  • 商標が登録要件を満たした場合(拒絶理由がない場合)は、出願が公告(公開)されます。
  • 公告後3月以内は、異議を申し立てることができます。ただし、異議申立人の資格に一定の制限が課されます(2014年5月1日改正)。
  • いわゆる「権利付与前」異議制度が採用されています。なお、日本は「権利付与後」異議制度です。

登録

  • 公告後に異議申立がされない場合や、異議申立が不成立の場合は、商標が「登録」されます。
  • 商標権の存続期間は、登録日から10年間です。

<商標登録の取消し>

  • 登録商標を継続して3年間使用していない場合には、商標局から登録商標の取消を命じられることがあります。
  • ここで商標の「使用」は「商品の出所を識別するために商標を用いる行為」と定義されています。例えば、商品を単に中国から輸出するだけでは商標法上の商標の「使用」に該当しないので注意が必要です。
  • 商標権侵害による損害賠償を請求するときにも、過去3年間に中国で登録商標を使用していた必要があります。商標権者が、登録商標を使用することなく、例えば商標を高額で売りつけるべく商標権侵害訴訟を提起した場合には、不使用の抗弁を行うことができます。一方で商標権者としては、損害賠償請求に備えて登録商標を使用した証拠を保存しておくことが重要です。

<日本と中国との指定商品/役務の違いとアドバイス>

  • 指定商品/役務の漢字表記が同じでも日本と中国とでは保護範囲が異なることが多いので、注意が必要です。
    例えば、日本では指定商品として「第25類 被服」と記載すれば、そこに「帽子」も含まれます。一方、中国では「被服」の概念に「帽子」が含まれまれないので、指定商品「被服」についての商標権は「帽子」に及びません。
    また例えば、日本では「界面活性剤」と「工業用化学品」は共に第1類に分類され、類似群コードも同じ「01A01」が割り当てられています。つまり、日本では両者は(少なくとも審査では)類似する商品として扱われます。
    よって、例えばある商標について「界面活性剤」のみを指定商品として商標登録すれば、他人が「工業用化学品」を指定商品として同一の商標を登録することを防ぐことができます。
    一方、中国では「界面活性剤」と「工業用化学品」は非類似であると判断されるので、「界面活性剤」のみを指定商品として商標を登録していても、他人が「工業用化学品」を指定商品として同一の商標を登録することができます。そのため、「工業用化学品」に商標を使用している場合には、他人から商標権侵害として訴えられる可能性があります。
  • 同じ商品/役務でも日本と中国とでは区分が異なることが多々あるので、注意が必要です。
    特に、第29類、第30類では日本と中国との相違が大きいので十分に注意する必要があります。
  • 上述した例からもわかるように、中国へ商標出願をする際には、単に日本で出願した商標の指定商品/役務を現地代理人に伝えるだけでは、権利に漏れが生じます。
  • 中国で漏れのない商標権を取得するには、実際に中国で使用/提供する(予定のある)商品/役務に基づいて、改めて指定商品/役務とそれらの区分を検討し選択する必要があります。
  • 国際登録出願(マドリッドプロトコル)で中国を指定する場合にも、指定商品/役務の記載について同様の注意が必要です。
  • 中国にも日本と同様に類似群コードがあります。
    類似群コードは、審査において商品/役務が互いに類似するか否かを判断する際に用いられるものですが、審査では類似群コードが同一であるため商品/役務が互いに類似する、あるいは類似群コードが異なるため非類似であると判断されても、裁判では逆の判断がされることがあります。
    例えば、中国の裁判例で、「自動車用の潤滑油」と「自動車用のモータ」は類似群コードが異なっているため審査では非類似とされたものが、裁判では類似とされたものがあります。

<国際登録出願時の注意点とアドバイス>

  • 中国はマドリッドプロトコルに加盟しているので、国際登録出願を利用しての出願もできます。
  • 直接出願した場合と異なり、指定商品/役務が10を超えても商標局へ納める費用は追加されません。
  • 出願人の名称や住所なども中国語に翻訳しなければなりません。予め出願人の中国語表記を予め決めておくと、後に商標権者の中国語表記を修正する費用等を削減することができます。
  • 国際事務局から中国の商標局に通報された日から18ヶ月以内に拒絶する旨が通知されなければ、国際登録日から中国で商標が登録されていたのと同一の効果が発生します。
  • 直接出願した場合には登録まで3年程度かかることもあるので、登録が早まるというメリットがあります。
  • ただし18ヶ月経過後でも異議申立により拒絶する旨が通知される可能性があるので、注意が必要です。
  • 国際登録出願の一般的な説明については、こちらをご覧ください。

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