欧州特許の出願公開による仮保護の権利

2020.04.01
弁理士・米国弁護士 龍華 明裕

1.権利の内容
 欧州特許出願が公開されると、通常実施権相当額の保証金を請求する権利 (EPC67条(2)) と、下記の権利を含む仮保護の権利が得られます。
 (1)仏国
 特許権と同一の権利が認められ、侵害の証拠保全手続を請求することもできます。但し、特許を認められたクレームが公開時のクレームと異なる場合はこの限りではありません。仮保護の権利に基づく訴は原則として特許権が認められるまで中止されますが、中間判決による救済が認められる場合があります(March 1, 1994 Cour de Cassation、 MIP December 1994 / January 1995)。
 (2)英国
 損害賠償、または侵害がなければ得られたであろう利益を補償する請求が認められます。但し、特許が認められた後でなければ請求をすることができません。また公開時のクレームが特許権として認められたことが請求の条件とされます。

2.クレームの翻訳文
 ドイツとフランスでは、クレームの翻訳文が提出され、それが公衆に利用可能になった時または発明を実施している者に送達された時から仮保護が有効になります。

3.権利行使による得失
 クレームの翻訳文を提出すると第三者が異議申立をしやすくなります。特に、異議申立期間の終了前に仮保護の権利を主張した場合には、相手側が異議を申し立てる可能性が大きくなるので、あまり勧められません。このため仮保護を得る為にクレームの翻訳文を提出することはあまりありません。

 但し、権利が設定登録されるまで放置すると大きな不利益が生じる場合には、特許出願人の強い意志を早期に侵害者に知らせておく必要があります。このような、強い意志の表明手段として仮保護の権利を活用するという方法が考えられます。特に、仏における仮保護の権利は強いので、実際にクレームされた発明がフランスで既に実施されている場合にはクレームの仏語翻訳文の提出を検討する必要があります。
 
 出願公開の伴う補償金請求権の確保をご希望の場合には、どうぞご連絡下さい。

以上


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