知財高裁判決:ライセンス料相当額として1.4億円の損害賠償認める

2019.11.14
弁理士・米国弁護士 龍華 明裕


事件の概要
 ㈱コーエーテクモゲームスが「戦国無双」や「真・三國無双」などの同社のゲームシリーズにおいて、㈱カプコンの特許権を侵害したとして、特許の有効性や損害額などが争われました。知財高裁は、ライセンス料相当額の損害賠償額として約1.4億円を言い渡しました。

判決のポイント
 損害賠償におけるライセンス料相当額(特許法第102条第3項)は、原則として、「侵害品の売上高×ライセンス料相当率」によって算定されます。
 本件では、このライセンス料相当率の算定に当たって、
  1.業界における平均ライセンス料率(2.5%)
  2.侵害品の売り上げに対する当該技術の貢献度
  3.特許発明の代替技術が存在するか否か
  4.特許権者と侵害者とが競業関係にあるか否か
を考慮した上で、特許権侵害をした者に対して事後的に定められるべきライセンス料相当率は、平均よりも高くなると考えられるから、特許権者が受けるべきライセンス料相当率は、3.0%を下らないものと認められました。
  ☞本年、特許法・実用新案法・意匠法・商標法に、同趣旨の改正がなされました。改正法は、来春2020年5月17日までに施行されます。

RYUKAからのご提案
 来春、改正特許法が施行されると、侵害者が賠償すべき損害額がより大きく算定されることになるため、他人の権利を侵害した場合のリスクが大きくなります。したがって、より一層、事前の特許調査が重要になります。また、従前にも増して、権利者から訴えられた場合の防衛策として、クロスライセンスできるような特許を取得しておくことをお勧めいたします。
 なお、自社製品に関する主要な技術の特許を取得しておけば、他社の特許技術を使用していたとしても、製品全体に対する他社の技術の貢献度(上記2.)が相対的に下がります。これにより、損害額が低く算定され得ます。したがって、このような理由からも、自社製品の特許を取得することをお勧めいたします。

以上

参考資料
今回ご紹介した判決の事件名
平成30年(ネ)第10006号特許権侵害行為差止等請求控訴事件

特許第3350773号
【請求項1】
ゲームプログラムおよび/またはデータを記憶するとともに所定のゲーム装置の作動中に入れ換え可能な記憶媒体(ただし,セーブデータを記憶可能な記憶媒体を除く。)を上記ゲーム装置に装填してゲームシステムを作動させる方法であって,上記記憶媒体は,少なくとも,所定のゲームプログラムおよび/またはデータと,所定のキーとを包含する第1の記憶媒体と,所定の標準ゲームプログラムおよび/またはデータに加えて所定の拡張ゲームプログラムおよび/またはデータを包含する第2の記憶媒体とが準備されており,上記拡張ゲームプログラムおよび/またはデータは,上記標準ゲームプログラムおよび/またはデータに加えて,ゲームキャラクタの増加および/またはゲームキャラクタのもつ機能の豊富化および/または場面の拡張および/または音響の豊富化を達成するためのゲームプログラムおよび/またはデータであり,上記第2の記憶媒体が上記ゲーム装置に装填されるとき,上記ゲーム装置が上記所定のキーを読み込んでいる場合には,上記標準ゲームプログラムおよび/またはデータと上記拡張ゲームプログラムおよび/またはデータの双方によってゲーム装置を作動させ,上記所定のキーを読み込んでいない場合には,上記標準ゲームプログラムおよび/またはデータのみによってゲーム装置を作動させることを特徴とする,ゲームシステム作動方法。

特許法
(損害の額の推定等)

第百二条

3 特許権者又は専用実施権者は、故意又は過失により自己の特許権又は専用実施権を侵害した者に対し、その特許発明の実施に対し受けるべき金銭の額に相当する額の金銭を、自己が受けた損害の額としてその賠償を請求することができる。【改正後も変更なし】

裁判所は、第一項第二号及び前項に規定する特許発明の実施に対し受けるべき金銭の額に相当する額を認定するに当たっては、特許権者又は専用実施権者が、自己の特許権又は専用実施権に係る特許発明の実施の対価について、当該特許権又は専用実施権の侵害があったことを前提として当該特許権又は専用実施権を侵害した者との間で合意をするとしたならば、当該特許権者又は専用実施権者が得ることとなるその対価を考慮することができる。【2019年の特許法等改正により新設。本改正法は、2020年5月17日までに施行予定】