Alice Corp. Ltd. v. CLS Bank Corp.
(米国最高裁判所判決 2014年6月19日)
米国最高裁判所によるCLS Bank事件判決
― 抽象概念と特許適格性(米国特許法101条)―
米国最高裁判所は、抽象概念(abstract idea)を対象とする発明は特許適格性を有しないとして、
CLS Bankの特許を満場一致で無効と判断しました。
本判決は、ソフトウェア特許・ビジネス方法特許における
特許適格性判断の重要な指針となっています。
発明の内容(CLS Bank特許)
CLS Bankの特許(USP 5,970,479)は、
信頼できる第三者を用いて当事者間の債務を決済し、
決済リスク(settlement risk)を排除する
コンピュータ化された債務取引プラットフォームを対象としていました(注1)。
特許適格性の判断ステップ(米国特許法101条)
最高裁判所は、米国特許法第101条が
自然法則・自然現象・抽象概念を
特許保護の対象から除外しているという
基本原則を改めて確認しました。
裁判所は、Mayo Collaborative事件(2012年)で示された
分析手法に従い、以下の2段階の判断を行いました。
-
クレーム対象の判断
問題となるクレームが、特許適格性のない概念
(自然法則・自然現象・抽象概念)を対象としているか -
クレーム要素の判断
クレームの構成要素を個別および全体として考慮した場合に、
抽象概念を特許適格性のある発明へ変換する
「発明思想(inventive concept)」が含まれているか
① クレーム対象の判断(抽象概念か)
裁判所は、仲介者を通じて決済リスクを軽減する方法に関する
本件クレームは、
Bilski事件(2010年)で無効とされた
リスクヘッジの方法と同様に、
特許適格性を有しない抽象概念であると結論付けました。
本特許は、仲介された決済というコンセプト、
すなわち第三者を利用した決済リスクの軽減を対象とする。
仲介された決済のコンセプトは、
商取引において長年にわたり普及している
基本的な経済活動である。
第三者の仲介および決済機関(clearing house)の使用は
現代経済に不可欠な要素である。
したがって、仲介された決済は、
特許法第101条の範囲を超えた
「abstract idea(抽象概念)」である。
裁判所は、
既存の基本的真実(pre-existing fundamental truths)のみが
抽象概念として排除される
という主張を明確に退けました。
② クレーム要素の判断(発明思想の有無)
次に裁判所は、本特許が
抽象概念を特許適格性のある発明へ変換する
発明思想を含んでいない
と判断しました。
単に汎用コンピュータを用いると記載するだけでは、
抽象概念が特許適格な発明へと変換されないとしています。
「apply it with a computer」と付け加えるだけでは不十分である。
一般に、汎用コンピュータへ実装しただけの発明クレームは、
抽象概念そのものを独占するものであり、
追加的な技術的特徴とはならない。
システムクレームおよび記録媒体クレームの判断
裁判所は、システムクレームおよび
コンピュータ読み取り可能な記録媒体クレームについても、
同様の判断ステップが適用されるとしました。
クレームには「具体的なハードウェア」が記載されているが、
それらはほぼすべてのコンピュータが有する
純粋に汎用的な構成要素にすぎない。
これらは、抽象概念と特定の技術環境を
単に結びつけたにすぎず、
意味のある限定をもたらさない。
方法クレームもシステムクレームも本質的に異ならない。
方法クレームは汎用コンピュータで実施される抽象概念を記載し、
システムクレームはその抽象概念を実行する
汎用コンピュータの部品を記載しているにすぎない。
特許適格性をクレーム起草技術の巧拙のみに委ねることに対し、
最高裁は長年警鐘を鳴らしてきた。
その結果、システムクレームおよび記録媒体クレームもまた、
特許法第101条により特許適格性を欠く
と判断されました。
同意意見(Sotomayor判事)
Sotomayor判事は、
単なるビジネス方法を記載したクレームは、
特許法第101条により特許適格性を有しない
とする補足意見を述べました。
この意見には、
Ginsburg判事およびBreyer判事も同意しています。
参考:本件方法クレーム(請求項33・抜粋)
33. A method of exchanging obligations as between parties, each party holding a credit record and a debit record with an exchange institution, the method comprising the steps of: (a) creating shadow credit and debit records; (b) obtaining start-of-day balances; (c) adjusting records for each transaction in chronological order; and (d) end-of-day settlement instructions that are irrevocable.
(注1)方法クレーム(請求項33)
