オチアイCAFC判決

1996.05.05

- 自明でない物を製造または使用する方法クレームの特許性が容易に -

著者: パートナー  ポール E. ホワイト
    アソシエイト  B. J. サドフ
訳者: 弁理士  龍華 明裕(Ryuka)

 最近の2つの判決の中で、自明でない物を製造または使用するプロセスクレームの特許性の判断にはクレームされた発明と先行技術の引例との相違点を評価する必要があるということを、CAFCは再度支持しました。また、特に「per se rule」(* 他の要件を考慮せずに、所定の要件のみで特許性等を当然のこととして判断する手法。ここでは仮に「当然規則」と呼ぶ。)の使用を止めるべきであるとしました。オチアイ(Ochiai)事件 37 USPQ2d 1127 (CAFC 1995年12月11日)およびブルーワー(Brouwer)事件 37 USPQ 2d 1663 (CAFC 1995年12月13日)。

 裁判所はオチアイ事件において、新しく自明ではない有機酸から新しく自明ではない抗生物質の化合物を調合するプロセスクレームが、類似した酸を調合して類似した抗生物質の化合物を生成するプロセスを教示する複数の引例を組み合わせた場合に自明であるかどうかを判断しました。ブルーワー(Brouwer)事件では裁判所は、クレームされたプロセスの一般的な方法により、活性エチレングループを含む化合物とビニルスルホン酸のエステルとを普通に化学反応させる方法を教示する複数の引例を組み合わせると、架橋樹脂をアルケルスルホン酸と反応させて新しい自明でない樹脂触媒を作るクレームの方法が自明であるかどうかを考えました。

 いずれの事件においても審査官は、「類似した」開始物質を用いる、同じ汎用プロセスを先行技術の引例が開示する場合は、方法クレームにより定義される発明は自明であるという立場でDurden事件, 226, USPQ 359 (CAFC 1985)を引用してクレームを拒絶しました。

 Durden事件で裁判所は、「特定された開始物質および得られる物の一方または双方が新しく自明ではない場合に、そうでなければ自明な化学プロセスが特許されるか」を問われました。同360ページ。Durden事件の裁判所は、特許性の当然規則を作ることにより肯定的に答えはしませんでした。裁判所は、「新規なプロセスは、「全体として」考えても、また特定された開始物質、結果物、またはそれらの双方が先行技術の中に見つからない場合であっても、自明である可能性がある。」と判示しました。同362ページ。Durden事件の裁判所は新規なプロセスを自明でないプロセスと同じく考えることを拒否して次の様に述べました。

 例えば、以前に知られていなかった開始物質を用いて、従来の操作または反応を行いやはり新規である可能性のある製品を作る場合は、予測された結果が生じた場合であっても、他の点において古いプロセスが新規なプロセスになる。しかしそれは、必ずしもプロセス全体が103条において自明でなくなることを意味しない。

 Durden判決の後、PTOの審査官はDurdenの判例を特許を認めないための当然規則として適用して、その様なプロセスクレームを繰り返し拒絶してきました。

 オチアイおよびブルーワーの双方で裁判所は、クレームで使用した形式の既知の反応を拒絶するための示唆または動機付け、および他の物ではなくクレームしたプロセスで使用した特定の反応を選択するための示唆または動機付けを含む引例も、クレームされたプロセスで製造される特定の製品を得るための示唆または動機付けを含む引例も記録には無いと述べて、審査官の自明性の拒絶を覆しました。オチアイ1131ページおよびブルーワー1665ページ参照。更にどちらの事件でも裁判所は、103条(* 自明性)の判断を行うためには、Durdenなどの判例に基く自明性についての断定的な当然規則を機械的に適用するのではなく、先行技術および対象となっているクレームとの間の相異を実際に調べる必要があると繰り返しました。

 先例から当然規則を作ることの、行政上の便利さも認めると述べつつ、裁判所はオチアイ事件の中で「自明性の当然規則にたよることは法的に誤りであり止めなくてはならない。」と表明しました。同1133ページ。更にオチアイ事件の裁判所は「私たちの判例は、それら自体が当然規則を作ることを明白に拒否しており、判例は自明性のいかなる当然規則も作らない。」としました。同書。最後に、裁判所はDillon事件(16 USPQ2d 1897, 1903(CAFC 1990 大法廷))の「出願人が方法クレームを適切に提出して議論した場合には、当然のこととされていたDurdenの支配的な影響に捕らわれることなく、クレームは全ての・・・、関連する要因に照らして審査されるべきである。」ということばを繰り返しました。

 Durdenの裁判所は、予知できない出願に影響を与える可能性のある、103条適用方法の一般化をするべきでないと明確に述べましたが、特許庁はオチアイおよびブルーワーにおいてプロセスクレームを拒絶するために、自明性の当然規則としてDurdenの判決を用いたことが明らかでした。これは、止めなくてはならないとCAFCが強く述べた手続です。Durdenが特許を認めないための当然規則として用いられたのと同じようにして、今度はPTOは、オチアイおよびブルーワーを特許を認めるための当然規則として用いることも考えられます。オチアイおよびブルーワー判決とバイオテクノロジー特許保護法(新35USC 103(b))に沿う、製品およびプロセスのクレームを考慮するための審査ガイドラインが、1996年2月28日に発行されました(CD&Cの1996年 5月の知的所有権レポートをご覧下さい。)。

 私達CD&Cは、自明でない製品を製造または使用するプロセスのクレームを、継続中の製品クレームを有する出願に加えることを推奨いたします。例えば、特許性のある寄生細胞を培養して特許性のある物を作る使用方法のクレームは、 Durdenにより常に拒絶されていました。このようなバイオテクノロジーのエリアでは、プロセスのクレームを加えることはまさに適切です。

 オチアイ判決、ブルーワー判決その他の、ここでご説明した判決のコピーは喜んでお送りいたします。また、これらの判決に基づいく新しい戦略をどのように考え、クライアントをどうアシストすべきかについてCD&Cは準備を整えてあります。(* 訳者注)