特許出願から意匠登録出願への変更
特許出願から意匠登録出願への変更
2025年11月14日
弁理士・米国弁護士 龍華 明裕
特許出願から意匠登録出願への変更制度について、変更の要件・効果・意義、そして実務上の判断ポイントを整理してご説明します。
変更の要件
(1)変更が可能な時期
特許出願が審査に係属している間は、原則としていつでも意匠登録出願への変更が可能です。
ただし、拒絶をすべき旨の最初の査定の謄本が送達された日から3か月を経過した場合は、変更できません。
(2)出願人の同一性
変更前後で出願人が同一であることが必要です。
出願人が同一でない場合には、変更前に名義変更を行う必要があります。
(3)変更に係る意匠
もとの特許出願の明細書および図面に、変更の対象となる意匠が記載されていることが必要です。
また、変更に係る意匠が、もとの特許出願の明細書および図面に表された意匠と同一であることが求められます。
変更の効果
特許出願を意匠登録出願に変更した場合、もとの特許出願の日に、変更後の意匠登録出願がされたものとみなされます。
また、もとの特許出願時に
- パリ条約による優先権の主張をしていた場合、または
- 新規性喪失の例外の適用を受けるための書面を提出していた場合
これらの書面は、変更による新たな意匠登録出願と同時に特許庁長官に提出されたものとみなされます。
さらに、もとの特許出願は取り下げられたものとみなされます。
意匠登録出願へ変更する意義
特許出願から意匠登録出願への変更は、発明の性質や保護対象を見直す柔軟な手段として位置づけられます。
技術的保護よりもデザイン保護が有効と判断される場合、同一の出願日を維持したまま意匠登録出願に切り替えることが可能です。
例えば、
- 特許出願に対して拒絶理由通知が出された場合
- 出願後に事業計画が変更され、デザイン保護の重要性が高まった場合
などに、意匠登録出願への変更が検討されます。
実務上の判断ポイント
(1)全体意匠/部分意匠への変更
全体意匠への変更、部分意匠への変更のいずれも可能です。
以下の例では、1つの特許出願から部分意匠に係る複数の意匠登録出願へ変更されています。
- 特許出願番号:2019-119532(2019・未公開)
- → 意匠登録第1654053号(意願2019-14833(2019))
- → 意匠登録第1654027号(意願2019-14834(2019))
- → 意匠登録第1646319号(意願2019-14827(2019))
(2)実用新案登録出願への変更との比較
実用新案法は構造・形状に関する技術的創作を、意匠法は外観デザインを保護します。
保護目的が機能的改良であれば実用新案への変更が、形態的特徴の保護であれば意匠への変更が適しています。
(3)意匠未確定時の出願戦略
意匠が確定していない段階では、特許出願の図面に複数候補の意匠(6面図)を含めておくことが有効です。
審査請求前に必要なものを選択し、意匠登録出願への変更を行うことができます。
また、単一の特許出願から複数の意匠登録出願へ同時に変更することも可能です。
