中国から輸出される偽造品の排除(商標)

2019.06.28
弁理士・米国弁護士 龍華 明裕

中国で会社や商品の名前を覚えてもらうためには漢字の名前を使うことが勧められます。このため日本企業は中国で漢字商標を出願することが多く、カタカナや英語の商標をあまり出願していません。しかし偽造品が中国で製造されて輸出されるような場合は、輸出先で使用されるカタカナや英語の商標も中国で登録しておくことをお勧めいたします。

輸出用の商品は中国商標権を侵害しない?
中国の最高人民裁判所は2015年に、輸出のみのために作られたOEM製品(相手ブランド製品)に付された商標は中国で製品の出所表示機能を発揮しないと判断し、商標権侵害を否認しました(Pretul事件1)。しかし最高人民裁判所は慎重に、各侵害事件は、それぞれの事実に基づいて判断されると述べました2。このためその後も高等裁判所は、事実関係によっては、輸出用OEM商品の商標権侵害を認めています。

Dong Feng事件 (江蘇省高等裁判所 2015年)
そうした事件の一つがDong Feng事件です3。本件では中国のOEMメーカーが、インドネシアの商標権者へ輸出する製品を製造しました。しかしインドネシアの商標は悪意で登録されたものであるから、OEM製品は中国の著名な商標の商標権を侵害すると判断されました。裁判所は、商標が中国で著名である場合には、OEMメーカーはより高度な注意義務を負うと判示し、中国の登録商標が適切にライセンスされていることを確かめる合理的な注意をOEMメーカーが怠ったと認定しました4

Peak事件(上海高等知財裁判所 2017年)
米国のMorrisは、自分が所有する商標「PEAK SEASON」を付した商品を、中国メーカーに製造させ米国へ輸出させました。類似する中国商標「PEAK」の商標権者が商標権侵害で提訴しました。5
裁判所は、以下の理由により商標権侵害を認めました6
1 小さい「SEASON」と比較して「PEAK」が著しく目立っている。
2「PEAK」は外国でも評判がよく、Morrisはそのマークを知っていたはずだから「PEAK」が特に目立つ「PEAK SEAON」の使用には悪意が認められる。

税関
裁判所は、悪意で作られたOEM製品は国内商標を侵害し得ると判断しています。しかしOEM契約による製造・輸出であることが示されると7、中国の商標権者がOEM製造者の悪意を主張・立証しない限り税関は商品を差し止めません。

使用証拠
付随する問題は、OEMが商標取消を逃れるための「商標の使用」とみなされるかどうかです。この問題は最高裁判決で解決されていませんが、下級裁判所は引き続き、取消に対する防御の目的ではOEMを商標の使用と解釈しています8

ご提案: 日本や米国で使う商標を中国へ出願する
他社による侵害を排除するため
偽造品が中国で作られて輸出される恐れがある場合は、輸出先で使用されるカタカナや英語の商標も中国で登録しておくことをお勧めいたします。すると、第三者が悪意で貴社製品の偽造品を中国で製造して輸出した場合に中国で商標権侵害に問うことができるからです。また相手が海外の純正な商標権者のためにOEM生産していない限り、税関でも差し止めが認められるからです。

貴社による商標権侵害を防ぐため
更に貴社が、商品を中国で製造して輸出する場合にも、商品に付すカタカナや英語の商標も中国で登録しておくことをお勧めいたします。なぜなら同一の商標を第三者が先に中国で登録した場合には、貴社側の中国メーカーによる製造および販売が、悪意でないOEM生産であることを証明する必要があり、立証をできなければ商標権侵害に問われるからです。特に中国で作られた製品がネット上でも販売される場合は、中国でも入手可能であり商標権侵害に問われる恐れが高まるので注意が必要です。

ご不明な点がございましたら、どうぞお気軽にお問い合わせください。                以上



1Focker Security Products v. Pujiang Ya Huan Locks (Supreme People’s Court, 2015)
2China’s OEM Jurisprudence 1.5 Years after the Pretul Case, HOGAN LOVELLS, https://www.hoganlovells.com/en/publications/chinas-oem-jurisprudence-15-years-after-the-pretul-case-oem-use-may-still-infringe-upon-chinese-trademarks. (July 2017) citing Focker Security Products International Limited v. Pujiang Ya Huan Locks Co. Ltd.
3Shanghai Diesel Engine Co. Ltd v. Jiangsu Changjia Jinfeng Dynamic Machinery Co. Ltd
4OEM After Pretul, DEACONS, http://www.lexology.com/library/detail.aspx?g=544133ca-6b72-457d-a855-7009dd28ac89 (2017)
5China’s OEM Jurisprudence 1.5 Years after the Pretul Case, HOGAN LOVELLS.
6Id. at 3.
7Necessary documents to prove all goods are for export and proper authorization has been obtained from foreign right holder.
7OEM After Pretul, DEACONS. citing an ongoing case with a purported decision from the Beijing IP Court.

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