中国から輸出される偽造品の排除(商標)

2021.08.25
弁理士・米国弁護士 龍華 明裕

中国におけるOEM生産と商標権侵害リスク
― カタカナ・英語商標を中国で登録すべき理由 ―

中国で会社名や商品名を認知してもらうためには、漢字名の使用が有効とされています。
このため多くの日本企業は、中国において漢字商標を出願し、
カタカナ商標や英語商標はあまり出願していません。

しかし、偽造品が中国で製造され、海外へ輸出される可能性がある場合には、
輸出先で使用されるカタカナや英語の商標も中国で登録しておくことを強くお勧めします。


輸出用の商品は中国商標権を侵害しないのか?

中国最高人民裁判所は2015年、
輸出のみを目的として製造されたOEM製品に付された商標は、
中国国内で出所表示機能を果たさない
として、
商標権侵害を否定しました(Pretul事件1)。

もっとも、最高人民裁判所は同時に、
商標権侵害の成否は個別具体的な事実関係に基づいて判断される
と慎重な姿勢を示しています2
このため、その後の裁判例では、
事案によっては輸出用OEM商品であっても商標権侵害が認められています


Dong Feng事件(江蘇省高等裁判所・2015年)

代表的な事例の一つがDong Feng事件です3
本件では、中国のOEMメーカーが、
インドネシアの商標権者向けに輸出する製品を製造していました。

しかし、インドネシアの商標は悪意で登録されたものであるとして、
OEM製品は中国における著名商標の商標権を侵害すると判断されました。

裁判所は、商標が中国で著名である場合、
OEMメーカーにはより高度な注意義務が課されるとし、
中国商標が適切にライセンスされているかを確認する
合理的な注意義務を怠ったと認定しました4


Peak事件(上海高等知財裁判所・2017年)

米国のMorris社は、自社が使用する商標
「PEAK SEASON」を付した商品を、
中国メーカーに製造させ、米国へ輸出していました。

これに対し、中国で「PEAK」の商標権を有する第三者が
商標権侵害として提訴しました5

裁判所は、以下の理由から商標権侵害を認めました6

  • 「SEASON」と比較して「PEAK」が著しく目立つ表示であること
  • 「PEAK」は外国でも高い評価を有し、Morris社は当該商標の存在を知っていたはずであり、
    「PEAK」が強調された使用には悪意が認められること

税関における差止対応

裁判所は、悪意で製造されたOEM製品は中国商標権を侵害し得ると判断しています。

ただし、OEM契約に基づく製造・輸出であることが示される場合7には、
中国の商標権者がOEM製造者の悪意を主張・立証しない限り
中国税関は原則として輸出差止を行いません


OEM生産は「商標の使用」に該当するか

付随する重要な論点として、
OEM生産が不使用取消を免れるための「商標の使用」に該当するかという問題があります。

この点について最高裁判例は存在しませんが、
下級裁判所は現在も、
取消回避の目的においてはOEMを商標の使用と認める傾向にあります8


ご提案:日本・米国で使用する商標を中国でも出願する

① 他社による侵害を排除するため

偽造品が中国で製造され、海外へ輸出されるおそれがある場合には、
輸出先で使用されるカタカナ商標・英語商標も中国で登録しておくことが重要です。

これにより、第三者が悪意で貴社製品の偽造品を
中国で製造・輸出した場合に、
中国で商標権侵害として差止・摘発が可能となります。
また、相手が海外正規権利者のためのOEM生産でない限り、
税関差止も認められやすくなります

② 貴社自身の商標権侵害リスクを防ぐため

貴社が中国で製造し海外へ輸出する場合であっても、
商品に付すカタカナ商標や英語商標を中国で登録しておくことをお勧めします。

第三者が同一商標を先に中国で登録していた場合、
貴社側は悪意のないOEM生産であることを立証する必要があり、
立証できなければ商標権侵害に問われる可能性があります。

特に、中国で製造された商品が
インターネット上でも販売される場合には、
中国国内での流通が認められやすくなり、
侵害リスクが一層高まるため注意が必要です。

ご不明な点がございましたら、どうぞお気軽にお問い合わせください。

以上


1 Focker Security Products v. Pujiang Ya Huan Locks (Supreme People’s Court, 2015)
2 China’s OEM Jurisprudence 1.5 Years after the Pretul Case, HOGAN LOVELLS (July 2017)
3 Shanghai Diesel Engine Co. Ltd v. Jiangsu Changjia Jinfeng Dynamic Machinery Co. Ltd
4 OEM After Pretul, DEACONS (2017)
5 China’s OEM Jurisprudence 1.5 Years after the Pretul Case, HOGAN LOVELLS
6 Id. at 3
7 OEM契約および外国商標権者の正当な許諾を示す書類
8 OEM After Pretul, DEACONS(北京知財法院の判断を引用)