商標のシリーズ展開によるコアブランドの育成

2021.02.03
弁理士・米国弁護士 龍華 明裕

商標のシリーズ展開とは?
例えばLEXUS(登録商標)は、複数の車種に「LEXUS LS」「LEXUS ES」等とシリーズ展開されています。「Microsoft Word」「Microsoft Office」はMicrosoftという社名で商標がシリーズ展開されています。Appleの製品は、iPhone, iPadと、文字「i」でシリーズ展開されています。

商標のシリーズ展開により、商品群に、共通のイメージ、共通の品質を観念させやすくなると共に、商標を広く認識させやすくなります。仮にLEXUSシリーズや、Appleの各製品に、全く異なる名前が付けられていたら覚えにくいですよね? また共通のイメージや品質を観念しにくくなります。

商標のシリーズ展開方法
1.コアブランド+付属名称
コアブランド
上記の例ではLEXUSや、Microsoftがコアブランドです。コアブランドは、現在および将来の製品群に対してWeb上でも使われていないことが理想的です。

付属名称
上記の例では、LS, ES, Word, Office等が付属名称です。付属名称は、識別力が無いことが理想的です。すると万が一、付属名称に類似する商標が登録済みだった場合でも、問題が生じにくくなります。「コアブランド+付属名称」の製品が、主にコアブランドにより識別されるからです。コアブランドを商標登録するだけで、「コアブランド+付属名称」を十分に保護できる場合も多いです。
反対に、識別力の低い付属名称について、何らか権利を取得したい場合には、「コアブランド+付属名称」を登録する事も可能です(例:登録商標「Microsoft Office」)

2.「短いコア文字+普通名称」を一体にした造語
上記の例では、iPhone, iPad等が、これに該当します。普通名称は広く知られているので、コア文字+普通名称は覚えられやすいというメリットがあります。「コア文字」は2文字以上でも構いませんが、長いほど覚えられにくくなります。

「短いコア文字」は識別力を有さないので単独で登録をできません。このためシリーズ展開を予想されて、例えば、iTelevision, iCarなどを他人に先取りされる恐れがあります。また製品の計画ができるごとに「短いコア文字+新たな普通名称」を出願する必要があります。

コアブランドに求められること
コアブランド+付属名称で商標をシリーズ展開すると、商品が増えるごとにコアブランドが浸透し、会社のブランディングが図られます。コアブランドには以下の点が求められます。

1.強い識別力を有すること
日本で商標登録し事業展開していても、将来に海外展開を考えた時点では、既に海外で商標が取られていた、ということがしばしば生じます。予め各国に出願すると、費用が大きいうえに、不使用を理由に商標登録を取り消される恐れもあります。

これらのリスクを下げるためには、他人が選択しにくいコアブランドを選択することが大切です。すると各国で同じ商標を使いやすくなり、ひいてはブランド力が高まります。

他人が選択しにくい例
 ・造語(辞書に載っていない単語 例:LEXUS)
 ・既存の言葉を、新たに組み合わせた結合語(例:Microsoft)
 ・指定商品役務と全く関係しない一般的な用語(例:Apple)

他人が選択しがちな例
 ・3、4文字程度の短いアルファベット(他の組織・機関等の略称である場合が多い)
 ・指定商品役務に関連のある名称

2.各国での印象が良いこと
漢字商標の場合は中国および台湾での印象を、アルファベット商標の場合は、海外進出する可能性がある全ての国での印象を、予め調査することをお勧め致します。

例えば日本のハンバーガーチェーン名には英語で「こけ・バーガー」を観念させるものがあります。あるスポーツ飲料は、英語で「汗」入りを観念させます。これらは英語圏への展開に適しません。

弊所では、貴社商標の各国での印象を調査すると共に、貴社が商標をシリーズ展開し、ブランド力を高めるためのコンサルテーションをご提供しております。ブランディングでお困りの場合は、どうぞお気軽にご連絡ください。

以上