日本語PCT出願の活用戦略のご提案

2020.12.17
弁理士・米国弁護士 龍華 明裕

PCT国内移行出願を権利化する
日本出願に基づくPCT出願をした場合は、以下の理由で、基礎出願ではなくPCTからの国内移行出願の審査を受けることをお勧めします。

1.明細書が充実している
 PCT出願時に特許請求の範囲を修正し、明細書に加筆する場合が多いので,基礎出願を権利化するより有利です。

2.審査請求期間と特許期間が延びる
 それぞれ国際出願日から3年、20年なので,これらの期間が約1年延びます。

3.総費用はほぼ同じです。
  例:請求項数15の場合

  基礎出願  審査請求費用  138,000+15×4,000=198,000円
  国内移行  移行庁費用   14,000円
        移行弊所費用  60,000円(基本+審査請求)
        審査請求費用  83,000+15×2,400=119,000円
        差額:     5,000円(国内移行の方がやや安価)


国際調査報告を考慮して補正する
 下記の理由で、国際調査報告の結果を踏まえて審査請求時に補正をすることをお勧めします。

1.拒絶理由が減る
・補正と同時に,意見書に代わる上申書も提出すると拒絶理由通知が1回減ります。
・すると権利化が早まると共に、審判請求または権利放棄を減らすことができます。

2.広めの権利にチャレンジできる
・拒絶理由応答時には、拒絶査定を避けるべく慎重に補正する必要があります。しかし審査請求時にはその心配が無いので、少し広めの権利範囲にチャレンジできます。

3.コストダウン
・上申書提出を省略して補正書のみを提出することもできます。この場合は拒絶理由への応答と比較して費用が下がります。審判請求が減ることでもコストが下がります。


国際出願時には日本の指定や国内優先権を取り下げない
日本出願を基礎にPCT出願をすると、日本では国内優先権(特許法41条)が主張されたことになり,本来は,優先日から1年4月経過時に基礎出願が取下擬制されます(42条)。しかし国内優先権の主張には委任状が必要なので、基礎出願及びPCT出願で委任状を提出/援用しなければ国内優先権主張が無効となり基礎出願が維持されます。

すると、後に委任状を提出し国内優先権の主張を有効にしたうえで、上述の様にPCT国内移行出願を権利化することもできます。この際に,国際調査報告を考慮した補正を行うこともできます。

そこで国際出願時には日本の指定や国内優先権の主張を取り下げずに、基礎出願および国際出願において委任状を提出/援用しないことをお勧めします。


例外:権利化を急ぐ場合
ただしPCT出願前に基礎出願の審査を請求済の場合は,PCT出願時に日本国の指定または国内優先権の主張を取り下げることをお勧めします。

これらが取り下げられていなければ、国内優先権の主張の有効性が確定せず、審査着手が遅れるからです。特許庁では、PCT国内移行期限から3月経過してから国内優先権主張の有効性を判断し、その後に初めて審査が請求された状態になります。

ご不明な点がございましたら、どうぞご遠慮なくお問い合わせください。

以上


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