ブランドの確立と保護
ブランドの確立と保護
2025年10月27日
弁理士・米国弁護士 龍華 明裕
ブランドの確立と保護に必要な業務は、以下の4段階に整理できます。
A. ブランド戦略の策定
B. 商標選択前の調査
C. 商標登録
D. 商標登録後の管理・監視
A.ブランド戦略の策定
ブランド戦略は、企業理念・方向性を明確に反映させるため、まずは自社内での検討が重要です。
弊所では、その検討プロセスで商標面および法的観点からの助言を適宜ご提供いたします。
1.ブランドラインの明確化
高級志向、低価格志向、健康志向など、顧客に伝えたい価値に応じてブランドラインを分類します。
企業買収の場面でも、買収先ブランドを既存ラインへ統合するか、新設するかの判断が必要です。
2.コア商標の選定
ブランドラインごとに共通して使用する中心的な商標(コア商標)を選定します。
3.ブランド使用方針の策定
商品やサービスごとに、コア商標へどの要素を組み合わせるかを定め、商標バリエーションの幅を決定します。
4.デザイン憲章の作成
コア商標の使用ルール(表示位置・大きさ・色など)を体系化した「デザイン憲章」を作成します。
ロゴ専門デザイナーに依頼することも可能で、弊所ロゴにも専用のデザイン憲章があります。
B.商標選択前の調査
選択した商標が既存商標と類似している場合、権利侵害や出願拒絶の可能性があります。
そのため、使用開始前に登録商標の調査が不可欠です。
調査内容
- 登録可能性の調査(類否・識別力など)
- 商標が与える印象やイメージ調査
- 覚えやすさ・発音のしやすさの調査
主要国の類似商標は日本からオンライン調査が可能ですが、その他の点は現地代理人の意見を聞くことが安全です。
費用は国により大きく異なるため、案件ごとにお見積りをご提示します。
事業規模・展開スピードに応じて、商標登録範囲を段階的に拡大する設計も可能です。
国内→海外、主要ブランド→派生ブランドなど、優先順位づけで費用最適化を行います。
C.商標登録
ブランド戦略で定めたコア商標や必要なバリエーションを登録することで、商標の使用権を確保できます。
商標登録を行わない場合、第三者から使用差止や損害賠償を請求される可能性があります。
一方、商標権の取得は独自性を保護し模倣・混同を防止するとともに、安心してブランド展開を進める基盤となります。
このように、商標登録は「攻め」と「守り」の両面からブランド価値を支える重要施策です。
D.商標登録後の管理・監視
商標は継続使用により信用が蓄積されるため、登録後の管理・監視が極めて重要です。
1.自社商標に関する管理
下記の(1)(2)は弊所で期限管理および手続を行います。
- (1)更新期限の管理および更新手続
- (2)使用証明の期限管理および提出対応
(3)(4)は、実際の事業運営を最も正確に把握できる貴社での実施を推奨します。
必要に応じて、弊所が追加出願や登録内容見直しを助言いたします。
(3)商品・役務範囲の定期的確認
登録後に新たな商品・役務で商標を使用する場合、追加出願が必要です。
(4)商標使用状況の定期確認
ロゴ付記、要素の一部のみの使用、デザイン追加などがあった場合、状況に応じて新たな登録が必要です。
ブランドの統一性確保のためにも、登録商標と同一態様で使用することが重要です。
長期間使用がない場合、不使用取消審判により商標権を失う可能性があります。
2.他社による類似商標への対応
(1)使用監視
侵害品監視は半年〜1年周期が一般的ですが、模倣品リスクの高い地域では短周期の監視も可能です。
類似商標が発見された場合、書簡送付により使用停止を求め、悪質な場合は法的措置をとります。
(2)出願監視
① 監視方法
欧州では類似商標が出願・公告されると自動通知が届きます。
欧州以外では自動通知制度がないため、定期的な公報監視が必要となり、
Clarivate、Corsearch、Questel、Mark-i などの watch service を活用します。
② 監視期間
出願公開から異議申立期間終了までの間(例:7ヶ月)を基準に、適切な周期で調査します。
③ 類似商標出願が発見された場合
・異議申立を行う
・申立前に書簡送付し、混同防止の合意を得る場合もあり
欧州・中国では特に異議申立が重要です。
