商標審査基準第17版(改訂のポイント)

2026.07.30

板書:商標審査基準第17版(改訂のポイント)

商標審査基準が第16版から第17版へ改訂されました。
今回の改訂では、商標法第4条第1項第10号、第11号、第4項(コンセント制度)に関する審査基準が大きく見直されています。
本動画では、改訂内容と実務上の影響について、宮口先生に解説していただきます。

【本動画の内容】
商標審査基準が改訂されました。変更点は以下の通りです。

・商品・役務の類否判断における「取引の実情」
第16版まで:4条1項11号の類否判断で考慮
第17版:4条4項の「混同のおそれなし」の判断要素として考慮
・出願人と引用商標権者との「支配関係」
第16版まで:4条1項11号で考慮
第17版:4条4項で「混同のおそれなし」の判断要素として扱う
・商品等の「出所が実質的に同一である」場合
第16版まで:記載なし
第17版:4条4項で「混同のおそれなし」の判断要素として明記
・4条1項10号
第16版まで:11号の取扱いを準用
第17版:準用規定を削除し、4条4項も適用されない

・4条1項11号:他人の先願登録商標と同一・類似関係にある商標は登録不可
・4条4項:コンセント制度(4条1項11号に該当しても、他人の承諾を得ており、かつ混同のおそれがなければ登録可)
・4条1項10号:他人の周知商標と同一・類似関係にある商標は登録不可

1. 「取引の実情」の考慮
第16版までの取扱いは、引用商標権者が「商品・役務は実際には類似しない」と陳述した場合に、類似商品・役務審査基準だけでなく、具体的な取引の実情を見て、商品・役務を非類似と判断する余地を認めるものでした。この取扱いは4条1項11号の説明箇所に置かれ、10号でも準用されていました。
第17版では、4条4項の「混同のおそれなし」の判断要素として、「商標の使用態様その他取引の実情」が挙げられています。例えば、常に社名を併用する、対象商品が具体的に異なる、販売方法が異なる、販売地域が異なる、といった事情です。

2. 「支配関係」の具体例
第17版の4条4項では、次の3つの場合に、混同を生ずるおそれがないものとして取り扱うとされています。
①引用商標権者(子会社)が出願人(親会社)の支配下にある
②出願人(子会社)が引用商標権者(親会社)の支配下にある
③出願人と引用商標権者が同一の者の支配下にある(兄弟会社)

3. 「出所が実質的に同一である場合」の具体例
実際のブランド運営、事業実態、商標の使用態様等から、両商標が同一又は密接に関連する事業主体に係る商品・役務を表示していると認められる場合をいいます。
例1:商標権はIP管理会社、実際の事業主体はグループ内事業会社
引用商標権者はグループの知財管理会社A。出願人は実際に商品を製造販売する事業会社B。BはAから使用許諾を受け、同一ブランドの商品を継続的に販売している。需要者から見ても、同じブランド事業の一部として認識される。
→ 形式上の権利者は違うが、実質的な出所は同一と評価されやすい。
例2:共同開発・共同運営プロジェクトのブランド
A社とB社が共同で不動産開発プロジェクトを行い、同じ施設名・プロジェクト名を使って販売・管理・広告をしている。
引用商標はA社側が持ち、出願商標はB社側が出願しているが、需要者から見れば同一プロジェクトのブランドである。
→ 商品・役務の出所が実質的に同一と評価され得る。
例3:事業譲渡・ブランド移管の途中段階
引用商標権者Aから出願人Bへ、対象事業・ブランド運営が実質的に移管済み。
Aは旧権利者として登録を残しているが、現在の商品提供・広告・顧客対応はBが一貫して行っている。
→ 事業実施状況や使用態様から、出所が実質的に同一と説明できる可能性がある。
例4:OEM(Original Equipment Manufacturer)のケース
引用商標権者:製造元A 、出願人:販売元B
→AがBのために同一商品を継続的にOEM製造している
 ・商品の品質管理・仕様決定・ブランド管理をAとBが一体的に行っている
 ・需要者から見ても、Bブランドの商品だが、実際の供給・品質管理体制はAとの一体的事業として説明できる
→このような場合は、AとBが別法人でも、両商標が使われる商品について出所が実質的に同一と主張できる。
なお、OEM関係が存在する場合であっても、それのみで直ちに「出所が実質的に同一である」とはいえません。製造元と販売元が、対象商品について継続的なOEM取引関係にあり、商品の仕様・品質管理・ブランド管理を一体的に行っているなど、需要者から見て両商標が同一又は密接に関連する事業主体に係る商品を表示するものと評価できる場合には、「出所が実質的に同一である場合」として、4条4項の「混同のおそれなし」の要件を満たします。

4.「出所が実質的に同一である場合」と判断された審査例
先行登録商標「GRAND GREEN OSAKA/グラングリーン大阪」(登録第6568955号)の商標権者は、三菱地所、積水ハウス、大阪ガス都市開発等の9社です。後願商標「グラングリーン大阪 THE NORTH RESIDENCE」は、先行商標の商標権者のうち8社を出願人として出願されました。先行商標と後願商標の出願人とは完全には一致していないことから、商標法4条1項11号の拒絶理由が通知されました。

しかし、両商標はいずれも大阪駅北側の「グラングリーン大阪」という同一の都市開発プロジェクトに関して使用されるものであり、先行商標権者及び後願商標の出願人はいずれも同プロジェクトの事業者でした。形式上は商標権者と出願人が異なっていても、両商標が同一の開発事業に関連して使用されることから、その役務の出所は実質的に同一であり、需要者に出所の混同を生じさせるおそれはないと主張され、その結果、商標法4条4項のコンセント制度が適用され、後願商標が登録されました(登録第6927596号)。

このように、出願人と引用商標権者が同一の共同事業に関与し、両商標がその事業を示すものとして一体的に使用されている場合には、「商品又は役務の出所が実質的に同一である場合」に該当します。


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